ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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ついに海へ入る時がきた。
怖いと感じてローに頼んで近くで見てもらう。

「う”〜恐い……やっぱり」

足を付けるのも億劫なリーシャに痺れを切らせたローは背中を押して入らせる。

「わわっ!」

突然の事に驚きバランスを崩してしまう。
顔から付くのも嫌なので引け腰になってカックンと膝を折り回避する。
膝を付いた時に転けてしまう。
しかし、膝を曲げると手が地面に付かなくて顔が海へ入る。

「わぶ!モガモガ!」

口に海水が入ってしまい気泡が顔に当たる。

(溺れるー!!?)

パニックになる。
けれど、違和感を感じない身体に、直ぐに身体を起こして立ち上がる。
上を向くと焦った顔のローが居た。

「悪ィ。大丈夫か?まさかここまで慌てるとはな……プールが平気だったら大丈夫だと思って……リーシャ?」

「力、抜けない……」

唖然と呟く。

「抜けない……?おい、大丈夫か」

ローが心配そうに問い掛けてくるがそれに答える余裕もなくひたすら感動する。

「私、カナヅチじゃなくなってる!」

自分に向かって言った言葉に段々その事実を実感する。
とても信じられないが自分は海の中に居るのだ。

「泳げるんだ私!」

感動して盛り上がるリーシャ。
それに怪訝になりながらもそうだな、良かったな、と言うロー。
混乱している自分に何か言うのを諦めた感じだった。
聞かれても上手く説明出来ないので良かった。
嬉しくて身体がムズムズする。
そうとなれば、と泳ごうと決めた。

「ロー!泳ぐよ私!見てて!」

と、意気揚々に泳ごうとするが、やはり下手だった。
前に進まない。
泡もあまり立たない様で感覚は泳いでいるのに現実はこうも無惨だ。
プールでも練習したが、やはり下手なまま。
それに苦笑して付き合おうとするローに内心謝る。

「リーシャさーん」

マリベルが海の中から手を振る。
キッドも隣にいて泳いでいた。
どうこう言いながらキッドも楽しんでいるのでツンデレなんだな、と笑う。
マリベルに振り返すとローが始めるぞ、と声を掛けてくる。
それに頷くと彼の手を取った。
プールの時のように泳ぎ方をレクチャーしてくれる。
これなら気泡も泡も出来る程上手くなると期待させてくれた。
頑張って泳いで、憧れの海の中を見るのだ。
泳げると知った今、怖いものなど自分にはない。
黙々と練習していく。
やはりローの教えはスパルタだ。
練習している時に砂に足を取られて転び掛ける。

「わ!」

「あぶねっ」

咄嗟に抱き留めるロー。
抱き締められた事を意識すると上を向く。
助かったと息を吐くのと同時にローの顔が目の前に合って、身体が体温を感じる程に密着している事を感じさせた。
彼と目が合うと気まずさに目を反らす。
ローは一言も話さずに抱き留める力を強めた。
それに心臓が鳴るリーシャ。
ローが可愛いから男らしいに完全に移行する瞬間だった。


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