ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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やってきました、真夏の海。
キラキラと輝く海を太陽が眩しく照らしている。
日焼けするのも避けられない。
ドフラミンゴが用意してくれたという車に乗って約束の場所に待ち合わせていたので、キッドの彼女に車で初めて顔合わせした。
第一イメージはとても清楚な子で、とてもではないがキッドと付き合っているのが疑問な感じだ。
そんな事を言えば彼は不機嫌になることが分かり切っているので言わないけれど。
初めまして、と自己紹介をしてから話し出すと天然だというローの言葉通りの人柄だ。
清楚なお嬢様だ。
麦藁帽子と海が凄まじく似合う。
名前はマリベルと言うそうだ。

「リーシャさんはローくんの彼女何ですって?」

話し方も清楚系女子だ。
のほほんとしていて、全く嫌味な所がない。
キッドが話したのかローとリーシャの関係をスラスラと言うので一応、と答える。

「ユースタス屋、浮き袋持ってきたか」

「嗚呼。マリベルが持ってる」

マリベルは泳げるのか。
まだリーシャは海へ入った事がないので浮かべるのか、泳げるのかは分からない。

「マリベルさん。今日は私の我が儘に付き合ってくれてありがとうございます」

女友達の欲しいリーシャの野望に嫌な顔をしないで来てくれたのだ。
嫌なら来ないだろうし。
マリベルは微笑んでから「楽しみにしていたのだからおあいこですよ」と言う。
今所特にマリベルの天然な部分は分からない。
兎にも角にも女友達が出来たし、海に行くし、楽しみたいわけである。
意気揚々となる気持ちを落ち着かせようとも思わないリーシャはローに顔を向けて「いつ着くの?」と問う。

「高速に乗るらしいから早く着くようだ」

それに胸が高鳴る。
海は行ったことのない所だから想像が先を走っていく。
早く着かないかな、とシートベルトを掴んでマリベルと親睦を深める為に話したり、キッドとの馴れ初めを聞いてみたり。
キッドに怒られたので泊まる時に話しをしよう。
馴れ初めくらい話してくれたって構わないのに。
何をそんなに恥ずかしいのか。
何か面白いエピソードなんだな、と夜も楽しみになった。
そして、冒頭に戻る。
海は綺麗の一言。
着替えた水着はローから渡された。
どうやらモネからの指示らしいが水着なんて適当に着ればいいと思っているので遠慮なく貰う。
帽子とゴーグルは着用だ。
ちょっと辺な組み合わせになっているが、気にしない。
海に向かって叫びたい衝動を抑えて向かうは浜辺。
と、その前に体操をしないといけない。
一に三、とやっているとマリベルがやってきた。
どうやらやっと着替え終えたらしい。
マリベルの水着はパレオだ。
遅くなった理由は浮き輪を膨らませていたからのようで、片手に持っていた。
リーシャも浮き輪が必要なので入る入らないの前にロー達を見つけなければいけない。
周りを見渡すと女性の集団が何やら騒いでいた。
誰か有名人が来ているのかと気を向ける。

「マリベルさん。あっち行ってみましょう」

もし有名人ならば一目見てみたい。
野次馬根性で女性の集団に行くと、誰を囲んでいるのかさっぱり分からない。
にしても、ロー達はなかなか遅いと思い、周りを見渡す。

「リーシャっ」

名前を呼ばれた気がしたけれど、聞き間違いと思ってしまう程の小ささなので首を傾げる。

「退けっ」

女性達の集団をかき分けてくる陰。

「やっと出られた……」

「はァ、うぜェ……」

出てきたのは探していた二人だったのでびっくりした。
まさか囲まれているとは思って居なかったので不意打ちだ。
恐るべし海。
女性達もどこか情熱的になる魔性さを秘めているのかもしれない。
やはり、海は危険なのかも、と不安になる。
ローは片手に浮き輪を持っていて、良かったと安堵すると彼はリーシャの水着に気付いたようで見てきた。

「お……似合ってる」

「モネさんの見立てとかセンスが良いお陰だよ」

自分なら、こんな水着は実用性がないので買わない。
断言出来る。
キッドもマリベルの水着をポンっと褒めていた。
どもるなり何なりするかと思ったのに、慣れている。
それにマリベルも応えた。

「キッドくん……格好いいよ」

「……おう」

褒めるのには慣れていたのに褒められる事には慣れていないらしい。
照れるキッドが少し可愛く見えた。
マリベルとセットで見るとバランスも取れている。
照れるキッドを横目にリーシャに何か期待している様な目を向けてくるロー。

「ローくんは……あ、これって私じゃなくてリーシャさんの役目だね、ごめんねローくん」

と、ぽややーんと凄いことを悪びれもなく言う。
どうやらローは褒められたかったようだ。

「マリベル屋……お前」

後から聞いたのだが、本人に悪気は100%ないらしい。
ローが言っていたので実際にそうなのだろう。
マリベルの天然さに初めて触れたリーシャであった。


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