夏が半分過ぎた頃、去年と違う自分にもんどり打っていた。
ベッドでひたすらゴロゴロしていると思考がピンクになりそうだ。
気分転換に外へ出る事にした。
炎天下で早くも外へ出た事を後悔する。
「ん?あれは……」
火柱のようにチューリップの様にゆらりと揺れる物が視界に入る。
皆のヒーロー、だ。
「テーンプレーヒーローおお」
「止めろ恥ずかしいわボケ!」
大声で突っ込むヒーローことユースタス・キッド。
彼はバイクに跨がってアイスを食べていた。
ええい、炎天下の中で歩いているリーシャへの当て付けか!
「ヒーロー。リア充ヒーロー!聞いたよ聞いたよ。彼女居るんだって?ん?私は貴方に裏切られた気分なんだけど」
「だから変なあだ名付けんな。あ?彼女?今更過ぎて言うのも変な感覚だから言わなかっただけだ」
「今更?そんなに前からリア充だったの?孤高の狼をイメージしてたのに……」
「おれを何だと……メール以外で話すと疲れる……つーか裏切られた??」
二言前の言葉に今更引っかかっているキッド。
「ローが天然だって言ってて、凄い会いたくなったわけ」
「おい待て……今ローって言ったか?」
そこなの、着眼点は?
キッドは話して欲しい事を言う前にロー呼びについて気になるらしくまた聞いてくる。
そんなに気にする事なのかと首を傾げつつも頷くとキッドは眉間に皺を寄せる。
そんなに寄せると跡になるんだから。
ぼんやりと待っているとキッドは「アイツから呼ぶように言ったのか?」と聞いてくる。
それにうん、と答えると次は笑う。
顔芸が忙しいキッドだなあ今日は、と思っていると彼は「案外アイツも分かりやすいんだな」とクククと笑った。
そんなにローの噂をすると出るぞ、なんて思うとキッドの機嫌は良くなる。
「成る程なァ」
「名前って言ってるけど、歴代の彼女達はローって普通に呼んでたよ?」
「勝手にだろな。そりゃ」
キッドの言葉にそうなんだ、と頷く。
勝手に呼ぶなんて、やはり彼女というポジションだから呼んでもいいと自然に思ってしまうのだろう。
それにしても、いつキッドの彼女に会わせてくれるのだろう。
女友達が欲しいのだ、欲しているのだリーシャは。
懇願するように頼むとキッドは別に構わねェと諦めたように言う。
「やった!海水浴行くから、一緒に行こう」
「初対面なのに海水浴かよ」
「彼女さん嫌がる?」
訊ねると「気にする奴じゃねェ」と言うので早速ローにキッドへの約束を取り付けたとメールを送る。
すると、返ってきたのは近くにキッドが居るのか、という返信。
「絶賛会話中ーっと」
「トラファルガーか。アイツと上手くいってんだな」
「え?どういう意味?ていうか、ローとはお試しお付き合いみたいな感じだけど」
「……は?付き合って無いって事か?」
それも少し違う。
「んー……付き合ってるけど合意の上でっていうか……別に好き合って付き合ってる訳じゃないから」
「……へェ」
胡散臭そうに目を細めるキッド。
「面倒臭ェカップル……」
メールの返信を打って送信する時にキッドから何か聞こえた気がして「何か言った?」と聞くと「別に」と言われたので気にしない事にした。
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