ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「ベビー5、俺に何か言う事はあるか」

「何もないです」

「それは認めるっつー事でいいんだな」

「いいえ、監督」

「!?」

朝からローはご立腹な様子で仁王立ちをしてベビー5を締(し)めていた。
隣にリーシャも隈をこさえて立っている。
まさに徹夜明けだ。
ベビー5の発言にこちらを見るローに「楽しい思い出を語っただけ」と言うが、ベビー5の勝ち気な顔にイラッと来たのかローは分厚い本でベビー5のおでこを小突いた。
凄く痛がるベビー5を眺めてからローは此方(こちら)を改めて見る。

「お前も……どうしてこの馬鹿と同じ物を作ってんだ……」

隈の事を言っているらしいローは呆れた目で二方を見る。
それにベビー5が反論した。

「何よ、ローだって消えないような隈を持ってる癖に」

「まだ反省が出来てないようだな」

額に青筋を立てるローの言葉の後にモネの爽やかな「朝食が出来たわよ」と言う声に全員が向く。
可笑しい、彼女も徹夜組なのだが。
隈も疲れも見て取れないモネが素晴らしい笑顔でテーブルの横に立っていた。
ドフラミンゴもそこへ同席している。
どうやらトラファルガー宅では朝も夜も一緒に派らしい。

「フフフ、ロー。そこまでにしとけ。初めて同じ歳の女が屋敷に泊まったからベビー5も嬉しいんだ……それとも、嫉妬か?」

「チッ……ドフィ、余計な邪推すんじゃねェ」

ドフラミンゴの介入により朝食をやっと食べる事が出来た。
朝からなんと和風な事か。
魚焼きや白いご飯に味噌汁が並んでいて、どれも絶品だった。
咀嚼しているとローがドフラミンゴに聞く。

「今日は何処かに行く予定はあんのか」

「あァ、ちと出張にな……三日留守する」

「えー、若様行っちゃうの?」

「ベビー5、いい子にしてろよ?」

「リーシャに屋敷を案内するから一緒に回ろうと思ったのに……」

「フッフッフッ、昼から出る。俺の部屋には居るからいつでも来い」

ベビー5はしょんぼりとなっていた顔を上げて頷く。
彼の出張は頻繁にあるらしい。
リーシャはドンキホーテファミリーの朝の会話を聞きながらぼんやりと思った。

「嬢ちゃん」

「あ、はい」

ドフラミンゴに呼ばれて相手の方向に目を向ける。

「家主は居なくなるが遠慮せずに泊まってってくれ……俺が帰ってきた後も泊まり続けてくれたらご褒美をやろう」

意味深な言葉にローが反論する。

「ドフィ、リーシャを混乱させるな」

「おーおー!ローは過保護だな」

ドフラミンゴはおもちゃを扱うようにからかう。
それに無視をしてそっぽを向くロー。
このままではと何かを言う為に口を開く事にした。

「お気遣いありがとうございますドフラミンゴさん。夏休みもこれからなのでゆっくりと此処で休んでいきたいと思います」

「おい聞いたかロー。いい子過ぎて俺はお前には勿体ねェと思い始めてきた……!」

「ドフィ……!」

「若様、それ以上ローを怒らせたら二度とリーシャを家に連れてきてくれなくなるわよ?」

「フフフ!それもそうだな」

ドフラミンゴはモネの言葉にからかっていた口を止めて立ち上がる。
どうやらローを弄ぶのは此処までらしい。
本当にローは此処の人達に振り回されやすい。
苦労人、器用貧乏、と言う言葉が当てはまる。
息を切らせているローが気持ちを落ち着かせて焼き魚を食べ出した。







朝食を食べ終えた後はベビー5が屋敷を案内するとリーシャを各部屋に連れて行く。
ローも二人では不安だと付いてきてくれた。
過保護というドフラミンゴの言葉が脳裏に過ぎる。
ベビー5は余計なお世話だと怒ったがローは断として付いて来るので、彼女も途中から諦めた。
テクテクと歩いていると前方からヴェルゴが来るのが見える。
それにローの舌打ちが聞こえた。
ドフラミンゴと同等の扱いを感じる。
ヴェルゴが立ち止まってこちらを向く。

「ローも居たのか。ドフィも部屋に居るぞ」

ヴェルゴはそれだけ言うと立ち去った。
ドフラミンゴの用心棒だった筈だ。
これを伝える為だけに近寄ってきたのだろうか。
見た目と反して気遣いに溢れているのかもしれない。
ローは不機嫌になりながらも行くぞ、とベビー5を足す。
ベビー5もドフラミンゴの部屋に居くのか足を進める。
リーシャも流れるままに付いていくがなかなか着かない。
この和風外装の屋敷はとても敷地が広くて歩くだけでも運動になる。
やっと着く頃には少し息が上がっていた。
ベビー5に大丈夫と聞かれる。
彼女もローもケロッとしているのが凄い。
ベビー5がノックをするとモネが扉を開き顔を見せる。
来るのが分かっていたからかすんなり通してもらえて中を見た。
何というか、凄く豪華で今までの部屋より広いのが分かる。
キラキラしている部屋の主が椅子に座っていた。
大きな机に足を乗せていたので不良みたいだと密かに思う。
ドフラミンゴは良く来たな、と大きく口を開いて笑うとモネに何かを出してやれ、と指示する。
実際にこういう場面を見ると秘書と社長なんだな……と改めて思う。
三人はこれまた大きなソファに座ってモネの入れてくれた紅茶とケーキを食べる。
ケーキだなんて準備が良いな、と感心と共にその美味しさに驚く。

「家に専属のコックが居るんだ」

ローが説明する。
流石は世界規模の会社を運営する家主の住む場所だ。

「一人は俺らとあんまり歳が変わらねェ」

「その人凄いね」

若いという事で想像してもシルエットは真っ黒で不明。
どんな人だろう。
こんなケーキを作れる腕を持っているなんて天才なんだ、と思った。
ドフラミンゴの隣にモネが佇んでいて、ドフラミンゴ本人はベビー5に屋敷は案内出来たか、という話題を振ったりする。
話しも途切れたり途切れなかったりして、程なくしてからドフラミンゴの仕事部屋を後にした。

「沢山歩かせてごめんなさい」

「ううん、とっても有意義だった」

ベビー5はこれから仕事だと言うのでローと一緒に別れた。


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