ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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動物園から帰って、ドフラミンゴ&ロー宅へと足を踏み入れた時には夕日が沈みかけていた。
随分と楽しんでいたんだな、と物思いに老けているとまたメイドの列が目に入る。
三人は慣れた様子で入っていくが、リーシャは流石に慣れていないので頭を下げながら道を歩く。
毎回思うがやはり玄関が長い。
ローはリーシャを見る為に振り返った状態で「ああ……」と何かに納得した顔でこちらに来る。

「ドフィ、メイド達を並べさせるの止めないか」

「あ?……フフフ、成る程」

ドフラミンゴも納得した顔でメイド達を直ぐに解散させる。
気を遣わせてしまったと思っているとローは気にするな、と声を掛けてきてくれるが、どうにも悪い。
泊めて貰えるだけでも迷惑を掛けているのに、此処までしてもらうのは流石に忍びないと溜息を付く。

(郷に習えって言う言葉もあるんだから私が慣れなくちゃ)

ローに私は大丈夫だから、と言うと彼は困ったように眉をハの字に曲げて「お前がそう言うなら」と言ってくれる。
この場所のメイド達の仕事を奪うのはやはり駄目だと意気込む。
そうして話し込んでいると玄関の開け放たれた扉からベビー5が歩いてくるのが見えた。
いつの間にかモネとドフラミンゴは居なくなっている。
先に入ってしまったらしい。

「ご飯の用意が出来てるわよ」

「リーシャ、お腹は空いてるか?」

「うん、たくさん歩いたからもうペコペコ」

ローの言葉に答えると優しげな笑みで「行くぞ」と手を引かれる。
その間にふといつからローはリーシャを名前で呼ぶ様になったのだろうかと思案した。
前は、最初の時は確かに名字で呼ばれていた。
考えているとローの手引きで家の中へといつの間にか足を踏み入れていて、夜食の良い香りが鼻孔を付いて、お腹が減るのを強く感じた。










美味しい料理に舌鼓(したつづみ)を打ってリーシャの家のような一般家庭よりも遙かに大きなお風呂、いや、大浴場に入らせてもらった。
本当に良い湯だ、とスベスベの肌に歓喜する。
当初は一緒に入ろうとモネやベビー5からお誘いがあって、どうしようかと悩んでいると近くに居たローが「初めてなんだから一人で入らせてやれよ」と口添えしてくれて助かった。
その際にベビー5がローへ「女のデリケートな会話に入ってくるなんて助平なロー」と言うのでローが般若の如くその眼力でベビー5を泣かせた。
そんなドタバタを経て無事に一人で入る事が出来たのだ。
ローはベビー5が好きなのか嫌いなのか分からない態度である。
明日は共に入るのも良いかもしれない。
明日こそは一緒にとベビー5も言っていたし、明日は明日で楽しみだ。
鼻歌を歌いそうな程、今自分は楽しく思っている。
この世界は刺激が無いと思ったが、案外悪くないかもしれない。

「リーシャ」

名前を呼ばれて振り返るとローが後ろに立っていた。
どうやら彼も大浴場を使ったのか、パジャマ姿だ。
パジャマと言っても良いのか分からないが、兎に角ラフな姿をしている。

「ベビー5が一緒の部屋で寝たいとただを捏ねやがって……もし嫌なら断れ。なんなら俺から言う」

その言葉にリーシャは首を振ってベビー5と共に寝る意をローに伝える。
すると、ローはバツが悪そうにこちらを見つめた。

「無理しなくていいんだぞ。あいつとはあんまり話した事ないだろ」

「ううん。いいの、これから仲良くなるから……私ね、今日、凄く楽しかった。それってドフラミンゴさんやモネさんがそうなるように考えてくれたからだと思う。だから、此処の人達が私を好意で此処に泊めてくれてる事も凄く伝わる」

今日の総意の考えを言うとローは目を見開いていた。

「だから、私も此処の人達と仲良くなりたい。勿論トラファルガーくんとも」

最後にローの事を言うと彼はごくん、と喉を鳴らした。

「リーシャ…………分かった」

ローはそう述べると踵を返して去っていく。
去る間際に笑みを浮かべていたという事は言いたい事は伝わったという事だろう。










何処で寝るのだろうと彷徨っていると、途中に居たメイドから教えられた部屋へ行く。
それにしてもメイドの美人率と執事の美形率が高い。

「此処でいいんだよね」

一つの扉の前に着いてドアノブを開けようとするが、その癖にハッとなる。
自分の家と同じように扉を開けようとしてしまった。
此処は一人だけの部屋じゃないのだと思い出してドアをノックする。
やがて了承の声が聞こえてドアのノブを軽く下に押す。

「待ってたわよ!」

熱く歓迎をしてくれたベビー5を目に入れてから部屋を見回すと洋風ではなく和風の部屋だった。
この屋敷の外観は和風で内装は洋風なのに部屋は和風というあべこべ。
ベビー5によれば和と洋と中があるらしい。
中華風は見てみたいな、と密かに思った。

「明日は屋敷を案内するわ」

「ありがとうございます、ベビー5さん」

「やだ、私の事はベビー5って呼んで。敬語なんて堅苦しいしね」

「えっと、じゃあ、よろしく」

「任せといて」

意気揚々と会話をしているとドアから音がしてベビー5がそれに答える。
誰だろうと見ていると入ってきたのはモネだった。
それに驚いているとベビー5が「今夜は寝かさないんだから」と悪戯な声で告げるのを聞いて苦笑。
ローの懸念が此処に来て現実味を帯びた。

「うふふ、若様に報告する事が増えるみたいで嬉しいわ」

「何言ってるの、モネ!女子会の話しは此処だけの秘密なんだから。いくら若様とは言え他言無用よ」

その言葉に安堵した。
しかし、次のベビー5のフリに内心気を揉む。

「学校のローってどんな感じなの?報告書だけじゃあいまいちピンと来ないのよねー」

(言っても良い範囲なら、いいか別に)

ローの取っ替え引っ替え時期の事はモネもベビー5も知っているだろうし、とリーシャは図書室での放課後居残りだったり、プールの話しだったり、映画取りの時の話しをベビー5の宣言通りに徹夜で話し通した。


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