ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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夏休みの最中、親が二人揃って旅行に行くらしい。
明日からと言うので寂しいな、と感じてキッドに報告した。
電話で親が居ないから一人だと洩らしたところ、返事にキッドがじゃあトラファルガーんとこ泊まれよ、と虫を払うように言うので「えー?」と思わず言う。

「そこはおれの彼女んち泊まれよっていう言葉を期待してたんだけど……」

『おれの彼女と面識も無いのに泊まらせられるか。つーか何でトラファルガーに言わねェんだよ。お前の彼氏だろ、一応』

「迷惑掛かるし」

『おれはいいのかっ!』

キッドをからかうのは楽しいが此処までにしておこう。
キッドの助言に従い、寂しい思いをするのは避けたいのでローへと連絡を入れてあれこれと説明。

「駄目かな?」

『駄目っつーか……』

ローが渋るように告げる。
やはり急だし迷惑だったのかな、と思い始めた時、いきなりローが慌てた声を出した。

『おいっ、何す』

『もしもし?ベビー5よ、覚えてる?』

『何勝手に話してんだ』

遠くにローの怒声が聞こえる。

『若様が泊まっても構わないと言っていたから、ローの発言は無視して明日から来ても問題ないわよ。何なら夏休みが終わるまで――きゃ!』

『悪ィ。テレフォンジャックされた。今のは雑音だ、忘れてく』

『雑音じゃないわよ馬鹿ロー!このヘタ』

今度はベビー5の声が遠くに聞こえる。
ローが電話を取り返したようだ。

『って、お前もか!止め』

『もしもし、モネよ。貴女が来るなら是非見せたい場所があるの。数日泊まれるかしら?もし服が用意出来なくてもこちらで用意するわ、うふふ』

モネがクスリと笑う。

「いきなりなのに宜しいんですか?お邪魔では……」

『あら、気にしないで。若様も是非と言っているし遠慮なんて必要ないわ……ベビー5、ローを離しても構わないわよ』

どうやらローはベビー5に抑えられていたらしい。
ゴッという音と軽い悲鳴が聞こえてベビー5の身に起こった事が脳裏に浮かぶ。
ローがぶった!という声にモネが「痛かったわね」と労る声の後に受話器から本来の相手に交代する。

『はァはァ……ちょっと手間取った。モネに何か言われたか』

聞かれて今の内容を端折(はしょ)りながら答えるとローの奥歯を噛み締める音が聞こえた。

『モネの奴……どうやら色々とおれの知らない所で何かが決まってるようだな……』

「みたいだね。あ、トラファルガーくん。流石にここまでお願いするのは悪いから、諦める」

『……いや、おれの判断だけじゃどうもあいつらが納得しねェみてェだ。モネとベビー5と発端らしいドフィがお前に来て欲しいと言ってるから、こっちから頼む。来てくれ』

『何でもっと早くそれを言わ』

『煩せェ』

ベビー5の遠くから聞こえる声にローが受話器から顔を離したらしく、小さく聞こえる騒動に楽しそうだと羨ましく思った。
かくして、ドンキホーテファミリー達の家にお邪魔する事となった。










次の日、お昼前からロー宅へ行った。
お出迎えは少し派手だった。
ドフラミンゴとモネとローが出迎えだのだが、ローが端から見ても不機嫌だったので、原因だろう二人に眼を向ける。
挨拶もそこそこにモネが「待っていたわ」と言い、何処かへ電話するとドフラミンゴがとても楽しそうに此方(こちら)へやってきた。
手前に来る前にローが隙間に入ってドフラミンゴの進行を妨げると、二人は無言で五秒程立ち尽くして、眼で何かを語っているようだ。
男同士の会話には流石に入れないので困ったまま同じ場所に居るとモネが来たわ、と言うのでローとドフラミンゴの二人は動き出す。

「フフフ、今日は楽しんでってくれ」

「え?何の話しですか?」

「行ってからの楽しみだ」

「??……トラファルガーくん」

ドフラミンゴの謎の発言にローへ説明を求めようとしたら彼も行き先は知らないと苦々しく言う。
モネも笑っているだけで先導して玄関の外へ皆を連れ出す。
先程までは無かったシャトルバスがそこに停まっていた。
ローと同じ顔をしているだろうリーシャよりも、先に乗っていくドフラミンゴにモネが「置いていくわよ」と言うので行き先不明のまま乗り込む事しか出来なかった。
ローも乗り込んでからリーシャも席に座るとバスは動き出す。
そして、モネが先程まで持っていなかった鞄をリーシャに渡してきたので中身を見るとお菓子が入っていた。

「遠足か何かか……」

ローが眼を眇めてそれを見ている。
対するリーシャは段々わくわくしてきた。

「モネさん、これ食べても?」

「ええ、若様も食べてるわよ」

二人で後ろを向いてドフラミンゴを見ると既にバナナを食べていた。
何故寄りに寄ってバナナチョイスなのだろうか。

「お前、別にバナナ好きじゃねェだろ」

ローが言うと二本目のバナナの皮を剥いているドフラミンゴが笑う。

「バナナがおやつに入るから食ってるだけの事だ」

「全く意味が分からねェ」

頭が痛くなってきたのか頭を手で揉むローにドフラミンゴは愉快そうに笑った。
どうやらリーシャがキッドをからかう事が楽しいように、彼もローをからかうのが楽しいらしい。
こういう所はシンパシーを感じる。

「あ、うまんぼーが入ってる。私スパイシー系が好きなんだよねー」

ごそごそと漁って見つけたお菓子の封を解いて食べる。
中にはジュースも入っていたのでローに渡す。

「ごめんトラファルガーくん。先食べてて……ジュースは何の味が良い?」

「……………………オレンジ」

リーシャまで食べ出したからか、ローはどうにでもなれと言わんばかりにそれを受け取った。


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