ガラスの靴は脱いだのよ | ナノ
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プールに行く為にローと待ち会わせしたのだが、彼は徒歩で現れる事はなかった。
車でやってきて送ると言われたので、乗ると彼は何食わぬ顔で座っている。

「驚いた……歩いて行くもんだと思ってた」

「おれも朝までそうだと思っていたんだが、ドフィがどこからか情報を掴んできて車の中に押し込められた」

「へえ。でもリムジンで来るなんてお約束がなくて安心した」

そう口にするとローは難しい顔で一つの仮説を言い出した。
この車は普通の軽自動車だが、これを見たのは初めてらしく、今回の為に買ったんじゃないかと推測。
お金持ちの考える事は分からない、と言いたげだったローだがリーシャは違う。

「もしかして目立たないように用意してくれたんじゃない?」

「ドフィは派手な事を好むんだ」

あり得ないと言いたげだ。

「えっとー、モネさんとかベビー5さんとかが口添えしたんじゃないかな」

考えられる事を並べてみるとローはそれなら可能性があると言って頭をもたげた。
それから徒歩で向かうよりも早く着く。
プールの開館時間が始まるちょっと前に着いたので車の中で待機した。
因みに運転手は見た事のない人だった。
メイドの他に居る、執事という職業をしている人だと説明を受ける。
凄く普通の服を着ていたから執事には見えなかった。
それから開館するのを見計らって外へ出ると扉は開いていて中に入る。
男と女の脱衣所が別れていて、お互いにまた後でと交わしてからロッカーを決めて服を脱いだ。
実は家で水着に着替えていたのだ。

「この日の為に買ったやつ……結構安かったなー」

夏休みに入る季節なのでセールをやっていた。
そこで素材とフォルムの良いものを見つけて購入したのだ。
髪を括って帽子と水中メガネを着用。
これで準備は整ったとプールのある場所へ向かう。
まだローは来ていないらしく一番乗りだ。
浮き輪でも膨らませているのだろうか。
その場面を想像して似合わないけれど萌えた。
先ずは指先から入れる。
それから体操をしていない事を思い出してパッと身体を解す。

(よしっ)

気合いを入れて指先を付ける。
バシャバシャと掻き回すように動かしてから、座って足をばたつかせると泡が飛ぶ。
ここまで浸かっても平気なら、と手を水に付ける。

「リーシャ……!その姿……」

出てきたローに声を掛けられる。
彼はこちらを見たまま複雑な顔をする。

「これは、予想の斜め上を行ったな」

ここは民間プールだから流石にスクール水着は着なかった。
だからと言ってビキニも着なかった、つまりスクール水着タイプの水着だ。

「本格的な格好だな」

浮き輪を片手に立つローは全身を見回して言う。
それは水中メガネと帽子の事を言っているのだろうか。
と言うより、やはりローは浮き輪を膨らませていて遅くなったようだ。
的中した事に見たかったな、と思った。

「遊びに来たというよりも確かめに来たって言うか……浮き輪、トラファルガーくんが使うの?っていうか持ってきてたんだ?準備良いね」

「いや、鞄の中に勝手に入れられてた。ご丁寧にバナナボートまであったが流石に狭くて邪魔になるから萎んだまま放置してる」

絶対ドフィ達の仕業だな、と確信するローに楽しんで来いと言われているのだとフォローする。
彼は不本意だが、そう思う事にすると言うと何の躊躇もなく水の中に入った。
それを見ているとローは入らないのか?と聞いてきて頷く。
恐る恐る入ったら足は着いた。
それに安堵するとローが浮き輪を渡してくるので受け取り、そこへ手首を乗せて足を浮かせる。
そのまま足をバタバタとさせているとローの哀愁を含んだ声がプールの部屋の中で木霊(こだま)した。

「全く進んでねェぞ」













急遽、ローに水泳を教えてもらう事になった。
別にいいよ、と遠慮をしたのだがロー曰く「見ていられない」程泳げていないらしい。
自分なりに泳げていたと思ったのだが、進んですらいないし、泳ぎ方もなっていないそうだ。
ローの指導の元練習するが、上達出来ていない。
辛うじて足を浮上させてばたつかせる事には成功している。
先程は泡すら作れない様子だったとローが言っていたので、そうなのだろう。
自分では実感出来ない下手さに苦労を重ねている。
休憩をする為にお尻を付けて平面の所へ座り、水の中で立ってこちらを見ているローと話した。

「ユースタスくんも誘えば良かったね」

「わざわざ誘ってやるような奴か?」

「だって、ユースタスくんだって一人ぼっちかもしれないでしょ?夏休み……友達は居るって知ってるけどね」

何となく一匹狼を感じさせるキッドだが、彼にも知る限り何人か友達が存在する。
リーシャの発言にローは一瞬怪訝に眉を顰(ひそ)め、合点がいったらしく初耳な事を述べた。

「あいつ彼女居るぞ」

「嘘!?」

「しかもお互いちゃんと両思いのリア充達だ」

ローがラブラブだと言うキッドの情報に「裏切られた気分」と嘆く。
それにローは「確かにあの空気の中に居たらあいつを殴りたくなる」とその空気に当てられた経験があるのか、とても苦々しく言った。

「彼女どんな子?」

そこがとても知りたい。
キッドを好きな子、キッドが好きな子。

「見た目は凄ェ清楚。中身はその更に上を行く清楚の皮を被ったド天然」

「え?ちょっとトラファルガーくんの説明がよく分からなかったんだけど」

「おれだってこんなに説明しにくい女がこの世に存在するとは思ってなかったんだよ」

何処か達観した顔で呟いたローにこれは一度会ってみたいと感想を抱いた。


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