3
月見団子は思っていたよりも甘くて美味しかった。
二人が談笑していると一つの陰が一部を黒くする。
リーシャとベポが顔を上げれば、そこにはローの姿が。
「ベポ。俺にも分けてくれるか?」
「アイアイ!」
小さなボトルに口を付けてゆっくりと味わうローに、ベポは楽しそうに動いた。
「フフ。どうした?目が泳いでるぞ、リーシャ」
「ふぇっ!?」
先程の戯れに気まずい気持ちを抱いていると、ローにからかいが含まれる口調で問われた。
リーシャはドキリとなる。図星も図星とはこの事だ。
あたふたと動揺を隠せずにいると、ローが笑いがしらにリーシャの腕を掴む。
「え!」
「月見酒に付き合え。月見団子もあるしな」
「で、でも……船員の皆さんが」
「んなもん、あいつらも勝手にやる」
「でも……」
渋る彼女を見事に丸め込んだローはニヤリと笑う。
甲板の端、月がよく見える場所へと連れていかれた。
二人でそこへ座ると、向こう側で船員達の賑やかな声が小さく聞こえる。
リーシャはローを見ないように顔を伏せた。
「照れてんのか?」
ククク、と喉を震わす声音にビクリと肩を震わす。
お互いの距離が近くて心臓が早鐘のように鳴っている。
「月さえ見れば俺は見えない。上を向いてみろ」
「………」
譲歩してくれたのだろうか。
落ち着き払ったローの声に、すんなりと顔が上に動いたリーシャ。
「綺麗……」
つい、ほろりと零れた。
ローも同じく上を向いているようで、「あァ」と肯定する。
毎日見ている月のはずなのにどうしてか、とても美しく思えた。
月に酔う
Title/惑星
[ back ] bkm