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ふれてひろがる世界


「リーシャ」

「はい?」

「今夜、月を見ないか?」


「月、ですか?」

「あァ。今日は満月らしい」



ペンギンから話を聞いたのは夕方だった。
お月見をするらしく、船員達はお酒を飲める口実だといきり立ってる。



「ね、ね、リーシャ!」

「どうしたの?ベポちゃん」



興奮気味の白熊がリーシャの肩をポンポンと叩いてきた。



「今日ね、コックがお月見だからって団子作ってくれるんだって!」

「そうなんだ。私、団子食べるの久しぶり」

「俺も」



二人でニコニコと笑い合いながら「一緒に食べようね」と話した。















それから二時間後、着々と月見と言う名の宴の用意を船員達がしていた。
リーシャは女性だからという理由や、ローを起こしに行くようにと頼まれて手伝うことができなかった。



(トラファルガーさん、起きてるかな?)



普段、ローを起こす役目は自然とリーシャがする事になっている。
何故かは、わからないが。



「トラファルガー……さん?」



控えめに船長室をノックする。
起こす為に来たのだと言うのに、おかしな行動だとはリーシャは気付かない。



「トラファルガーさん。起きてますか?寝てますか?」



ベッドの近くに歩み寄り、ゆっくりと寝ているのだろう人物の顔を覗き込む。



「あっ」



リーシャが小さく息を呑んだのは、ローの寝顔があどけなかったからだ。
不意打ちの事にリーシャは視線を逸らす。



(トラファルガーさん、やっぱり……綺麗な顔……)



隈は濃いが、それがまた顔のほりを深くしていた。
うっすらと閉じられた目には睫毛があり、鼻筋もスッとしている。
口元は形よく、顎髭も彼の美しさと気品さを引き立たせていた。



「きゃっ!」



突然、ベッドの端から腕が伸びてきた。
咄嗟の事にリーシャは手首を捕まれ、重力に従うように倒れ込んだ。
そこにはローが寝ているベッドがあり、ポフッとバネの音がリーシャを包み込む。



「え……!」



いつの間にかベッドの中に引き込まれていた。
リーシャはすぐに上を向く。



「人の顔をジッと見つめて……誘ってくれるな」



熱の篭った吐息が耳元に掛かる。


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