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そこへ向かって歩こうとした時、ペンギンが止まった。



「どうしたんですか、ペンギンさん?」

「いや……」



歯切れの悪い返答にリーシャはペンギンの顔を見遣る。
苦虫を潰したような表情をして、目を細めていた。
リーシャも、つられるように目を前に向ければローが。
よくよく見てみれば、隣には綺麗なプロポーションで真っ赤な口紅に笑みをたさえる美人な女性がいた。
リーシャは目を見開くと、パチパチとしばたかせる。



「ペンギンさん、私、お邪魔ですか?」

「そんなわけない。キャプテンはあれだ、その……」


上手い言葉が見つからないのか、ペンギンは眉を下げた。
今だペンギン達の存在に気付かないロー達。
そんな時、腕を絡めて顔を近づける女性の声がこちらまで聞こえてきた。




「船長さん。貴方、今日の夜は空いてるかしら?」



うっとりするような甘い声音。
リーシャは何故か、微かに鈍い痛みを胸に感じた。




「……酒入れろ」



女性の誘いに答えないまま、ローは無表情にコップをテーブルに置く。
そんな男の態度に女は動じることなく、むしろ更に大きな胸を密着させた。



「そんなツレない人も好きよ。ねぇ、キスしてもいい?」



そう言って、ローの顔に迫る女。
リーシャは、ますます言い知れぬ痛みを伴った。



(いやっ)



感情や頭やらがいっぱいになって、リーシャは頭を思いっ切り振りかぶる。



「リーシャ!」



途端、ペンギンの焦ったような声がした。
リーシャの視界は白くなる。
それは、失神ではなく能力の発動を意味した。
ほわわん、と真っ白な煙がペンギンをも包む。



(嗚呼……)



やってしまったと後悔する。
悪魔の実を宿す身体のリーシャ。
自分の能力を今だ上手くコントロールできないのだ。
興奮したり感情が高ぶるとたちまち、己の姿を変えてしまう。



「リーシャか……!」



シャチの驚く声が聞こえた。
ざわざわと船員達の声音が聞こえる。
視界がはっきりとしてきた。
店内は騒然としていて、まるで目を疑うという視線が自分に向けられていた。



「……メェ」



やはり動物特有の鳴き声しか発っせなかった。


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