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甘さ控えめ


これは、ある一日の出来事。
ローにとって記憶に刻んで刻んで刻みまくったものである。







一つの島に上陸したと船員から報告を受けたのは午後。
ちょうど昼時だったのでローは上陸する事を全員に承諾した。



「あれ?船長、リーシャは……」

「寝てる」

「あ、じゃあ俺船に残りましょうか?」



船の甲板を歩いているとシャチが声をかけてきた。
不意に、近くにいたペンギンがシャチに言う。



「お前が一番上陸を楽しみにしてたんじゃなかったのか?俺が残る。お前と船長は先に言ってて下さい」



ペンギンの言葉にローは頷く。



「わかった。本当は俺が寝起きを見たいが、薬品を買いに行かなきゃならねェ」

「よかった。船長、当分戻って来なくてもいいですよ」



よかったと言うには黒い笑みで毒を吐くペンギン。
横でシャチは引き攣った表情をしていた。



「リーシャの寝顔はな、世界国宝よりも貴重なんだぞ」

「リーシャの寝顔は寝顔ですよ。変態みたいな発言しないで下さい」



ドヤ顔を披露するローにペンギンは冷静に言い直すと、クルリと背中を二人に向けた。



「とにかく、俺がリーシャの事を見ておくので。早く買い物をしてきて下さい。シャチ、お前も酒場を抑えておけよ」

「わかってるわかってる」




ニコニコは上機嫌に笑うシャチ。
ペンギンはそれを見ると歩き出した。










コンコンと扉を軽く叩く。
しかし、中からは反応がなかった。
ペンギンは中に人の気配があることを確認してドアノブを回す。



「……まだ、か」



室内へ入ると男だらけの部屋とは違い、綺麗に片付けられているベッドへ近づく。
そこには、この部屋の主であるリーシャがいた。
まだ夢の中にいるようで、瞳は閉じられたままだった。
起こそうか否か、迷う。



(船長なら、どうする)



いつも起こす役目はローが行っていた。
といっても、リーシャはちゃんと朝には起きるので起こす必要はない。
今リーシャが寝ているのはきっと、夜遅くまでローと話していたからだろう。
リーシャからローに話をすることはあまりなく、ローが主に口を動かしているのだ。
それを寝まいとしょぼしょぼする目を必死に開けて話を聞こうとするリーシャの表情が浮かび、ペンギンはフッと口元を上げた。


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