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なんて思ったのもつかの間だった。
――コツ
「……!?」
トラファルガーさんが私のおでことおでこをくっつけて、少しでも動けば唇同士が当たってしまう距離になった。
「ローって言うまでキスし続けるまでだ」
「なっ!」
ニヤリと笑う彼に私は口をあんぐりと開けるしかなかった。
「んん!」
そんな私にトラファルガーさんは言った通り唇を寄せてきた。
咄嗟の事で反応できなかったから口は開いたままな私の口内に舌を入れてきた彼。
「ふんん……!」
水音が耳に伝わる中、私は必死に顔を離そうとするが、彼の手が頭の後ろに固定されてしまいできない。
「どうだ?言う気になったか?」
「……はぁ……む、無理――」
一旦唇を離されたが、否定の言葉を述べた瞬間また塞がれた。
「……ふ……ロ――」
「ん?」
「ロ、ローさんっ……」
これ以上はと思い、キスの合間になんとか名前を呼べば返ってきたのは「違う」という言葉。
「っ……」
「ローだ」
「ロ、ロー……」
何度も唇を合わされながら言われた通りに口を動かせば上出来だ、と唇を離された。
でも私は酸素が薄くなったせいで頭はボーっとなり呼吸は乱れている。
「落ち着くまでこうしといてやる」
とトラファルガーさんは私を胸へもたれ掛かせ、ゆっくりと髪を掬く。
私の思考はその動作に眠気を誘い、これからどうやって唇を奪われないようにしようかと考えながら意識を沈ませた。
***
「眠ってしまいましたね」
「あァ」
ペンギンの言葉にクッと笑う。
最近はキスをする機会も増え、俺はその隙を余すことなく狙う事ができる。
正直拒まれたら自分はし続ける事が出来るだろかと思ったが、彼女とのキスは心の中が満たされていくから途中放棄なんてできない。
(本当わかんねェな)
こんな自分をいつか彼女が受け入れてしまえば俺はもう止まることなど出来なくなるだろう。
(君が笑ってくれれば僕はそれだけでも世界が色付くんだ)
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