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「………」
「「「「………」」」」
どうしよう。皆がこちらを見て一言も言葉をださない。
トラファルガーさんさえ目を見開いている。
私はあれからかなり手の込んだメイクと一生着ないような露出したドレスを着させられた。
それから皆の前で自分がお披露目になって今の状況に陥っている。
「わぁ!リーシャ綺麗だよ!!」
ベポちゃん!
救世主がここにいた。
ようやく言葉を貰えてホッと安堵する私。
その言葉を筆頭に船員達も次々と褒め言葉を述べてくれる。
トラファルガーさんはグッと帽子を深く被っていたからよくわからなかった。
「ほらリーシャちゃん。トラファルガーさんにお酌してあげたら?」
と私の背中を押すミーナさんにうろたえる。
「え!えと……」
戸惑っていればずっと帽子を深く被っていたトラファルガーさんの視線が見えた。
「っ!」
(こんな格好でも恥ずかしいのに……)
「リーシャ」
「は、はい……」
トラファルガーさんに名前を呼ばれドキドキと心臓が波を打つ中、手招きをされそろそろと横へ座る。
なんとなしに回りを見ればいつの間にかテーブルには私とトラファルガーさんしかいなかった。
恐らく船員達は違う席へと移ったのだろう。
でも私的には二人きりにはしてほしくなかった。
――グイ
「きゃっ」
腰を引っ張られる感覚がし私は目を向けるとトラファルガーさんの顔が真ん前にあった。
「あ……」
「似合ってる」
漆黒の瞳でじっと見つめられただありがとうございますと下を向くしかなかった。
「綺麗だ」
「っ……!」
耳元でテノールの声が響き私は恥ずかしさと緊張で目をつぶる。
「……ひゃあ……!」
しかしトラファルガーさんの手が腰をスルスルと撫でたことにより視線はそこへ向かう。
「こっちへ向けよ。もっと見てェ」
「あっ……!」
前と同じく顎を掴まれたが、次に来たのは頬を撫でる感覚だった。
「ト、トラファルガー……さん」
「ローって呼べ」
「む、無理ですよ……」
「……わかった」
やっと妥協してくれたと感じ私は内心ホッと息をつく。
(これでもう言われない……)
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