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ホイップ島に滞在している俺達は、いつものように各自それぞれ自由行動をしていた。
「ペンギンペンギン」
「なんだ」
シャチに呼ばれ横を向くと何やら顔を緩ませて一点を見つめていた。俺も同じく顔をそちらに向けると、そこには黒い髪が印象的な顔立ちがかなり整っている女。
しかもなんだか男達に囲まれていて、危ない雰囲気だ。
「美人だな」
「確かにな」
「助けたい」
「一人でしろ」
短いやり取りですら呆れる俺がそう言えばキャスケットは「わかった!」と言い男達の元へとかけていった。
「おい男共、その女性の手を離せ」
なんともヒーローじみた台詞にため息を漏らせば、次には戦闘が始まりもちろんのことシャチがこてんぱんにやっつけた。
すると映画のワンシーンのように美女がシャチにお礼をいい何か恩返しをと言い始める。
「おーいペンギン!」
にこやかに帰って来たキャスケットとその横にいる美女を見ていれば、美女が驚いた表情をした。
「そのマーク……ハートの海賊団ですか?」
まるでネオン街を歩いているような露出した姿で質問をする美女に、俺はスッと頷く。
「そうだったんですか、私はミーナと言います。何かお礼をしたいのですが……私のお店に招待したいのですが――」
「お店?」
「飲み屋です」
「………」
俺はもしかしてこの女は、そういう類なんだろうと感じた。キャスケットはその言葉に大喜びし、船長に聞いてみると仮の約束を取り付ける。
(まぁ、そんなに気にする程ではないか……)
俺は船長がなんと言うか予想できた為大きなため息をついた。
***
「行くわけねェだろ。お前達だけで行ってこい」
「で、ですよねー……」
撃沈しているキャスケットを見ながら俺は酒を煽る。
リーシャと船へ留守番をしていれば、美女を助けたからお礼に店に招待されたなんて、俺は興味が沸かなかった。
「でもでも船長……!」
「なんだ」
何故か引き下がらないキャスケットに怪訝な視線を向ければもごもごと口を開く。
「女もいるんだけどって言ったら、じゃあその子には特別メニューを用意しとくって言われたんだぜ船長」
「………」
「リーシャ喜ぶと思います!」
「……はァ……少しの間だけだぞ」
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