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「どうぞ」
「「「「「おォ〜!!」」」」」
リーシャが出来上がったクッキーを船員達が集まる食堂のテーブルに置くと歓声が上がる。
「わぁ!リーシャって作るの上手だね!」
ベポちゃんの言葉に私は照れながらありがとうと言うと船員達が次々とクッキーを口に運んで行く。
「……どうですか?」
私は緊張しながら反応を伺う。
「うめェ!」
「おいしいよ!リーシャちゃん!」
「よく出来てる」
「……よかった――」
他の船員とペンギンさんの最後の言葉に私はホッと胸を撫で下ろす。
(うん。おいしい……)
一応テーブルに出す前に味見をしといたが、改めて食べると自分の感覚ではかなり上手くいったほうだと嬉しくなる。
「あ……」
なんとなしに目を動かすとパチッとトラファルガーと目が合ってしまった。
(うぅ……)
さすがに先程の事もあり気まずい。
そんな私にトラファルガーさんはクッキーを持った手を口から離し親指で口元についたジャムを取ると舌をちろりと出して舐めた。
まるでわざと私に見せ付けるように。
「――っ!!」
その姿がさっきのキスを思い出させてボンッと顔が熱くなる。
「わっ!……リーシャ!?」
どうやらリーシャは倒れたようでフカフカな感触とベポ驚いた声を最後に意識が失くなった。
***
(少しやり過ぎたか……)
まさか倒れるとは思わなかったが、ローの行動を見て顔を赤くしたリーシャに口元が上がる。
「船長……」
「俺はただジャムを舐めただけだ」
穴が空きそうな程ローを見てくるペンギン。
またか、という心の声が聞こえるようなため息が聞こえた。
昼に起きるとリーシャがいなく、ふらりと食堂に向かう途中で甘い匂いに自然と厨房へと体が動いた。
そこを開くといたのはリーシャで、楽しげな表情に見惚れながら声をかければ嬉しそうにクッキーを作っているからと話す笑顔に俺すらも口元が緩んだ。
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