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しかし、あれよあれよと進む男達。
ついに船の外へ出てしまったリーシャ。
そして、リーシャがそこで初めて見た船上の光景。
乱闘があったのだろう散らかりようと、どこもかしこにも人か倒れていた。
(ひっ……)
恐怖に体が止まる。
その隙にリーシャを運ぼうとする男達。
もうほとんど勝負がついているからか、男達は急いで羊を運ぼうとする。
それにリーシャは再び我に返り暴れた。
「メェ〜!!」
***
「今なんか、鳴き声がしなかったか?」
「まさか、ありえねーだろ」
一人の船員がシャチに喋り掛ける。
やっと、敵方を倒し終わったシャチ達。
今回も呆気なく勝利したが、いい運動になった。
「空耳じゃね?」
「えー、俺まだ若いのになァー」
ふざける船員にケラケラと笑う。
残りの残党を片付けろ、とローに言われたシャチは手際よく事を進める。
「船長もう行くんですかー?」
「当たり前だ」
ローの即答にシャチは苦笑する。
言わずもがな、リーシャが待っているのだから当たり前とくるのは当然だが――。
(こりゃ本当にベタ惚れだな)
自分達もリーシャを気に入っているが、ローはこれでもかというくらい愛情を注いでいる。
今のような敵襲があって、もしリーシャが誘拐されるようなことがあれば――。
シャチはぶるりと体を震わせる。
恐ろしくて想像なんてしたくない。
それくらい、リーシャはローにとっての安定剤であり、起爆剤なのである。
「メェ〜!!」
「はっ!?なんだァ!?」
シャチの耳に、突如羊のような鳴き声がつんざいた。
***
ローは久々の戦闘に嬉々として能力を奮った。
戦いというのは感情が高ぶるというが、常にそうというわけではない。
特に雑魚が相手だと高ぶるというよりは、弄ぶように扱う為、冷静でいられる。
戦いが終わった今、ローは上機嫌でシャチに指示をし、自室に戻ろうと足を動かす。
しかし、その足は再び逆の方向へと向くことになる。
「鳴き声?」
少し離れた場所から羊の鳴き声がしたことにローは眉を寄せながら振り向く。
「まだいたのか……」
そこにはなぜか羊を担いでいる男が二人。
しかしなぜ羊が?
ローは疑問を抱きながら船員に目配せする。
すると、船員達は男二人を取り囲む。
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