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男達が話している間、リーシャの心臓はドクドクと鳴り続ける。
「チッ、つまんねェな」
「もう行くぞ」
「そーだな」
会話が終わり、リーシャは体の力を抜いていく。
「ちょと待て。やっぱり中まで見てみねェとな」
「懲りねェ奴だな」
(やっ!やだやだやだ!!)
諦めずに中へ入ってこよとする男にリーシャの恐怖心は限界を越えた。
――ガラッ
「………」
「おい、どうしたんだよ?やっぱり何もなかっただろ」
「いや……なんか羊がいる」
「はァ?お前何言ってんだ――!?」
一人の男がシャワールームを除き込むと、驚きに言葉を失う。
「………」
そこには怯えているのか、プルプルと震えているモコモコな羊が一匹佇んでいた。
「な、なんでシャワールームに羊……?」
「そういやァさっき、喋って戦ってる白クマがいたぜ……」
「まさかこいつも喋んのか?」
「どうだろーな。でもそうなら、売ったらいい値がつく」
「じゃあ売り飛ばしてみるか」
そういうやいなや男達はその羊に手を伸ばした。
***
どうしてこうなったのだろう。
リーシャは混乱している中、ひたすらそう考えていた。
ただ男達がシャワールームへ入ってくるという恐怖心でいっぱいになり、いつの間にか、自分は――。
(ひ、羊ー!!?)
全くもって理解できない。
しかし、当てがないわけでもなかった。
そういえば自分は能力で、悪魔の実を食べたことがあったのだと、思い出す。
海賊船に乗っている事実よりももっと重大な事を忘れていたリーシャ。
最近は能力も発動しなかった為、自覚もなにもなかったのだ。
まず、能力を少ししかコントロールできない為、こんなことになるなど自分でも予想できなかった。
その前に、こんな風に完全に羊になってしまうことすら知らなかった。
(どどど、どうしよ〜!)
この姿から元に戻す術を知らないリーシャは、このままでは誘拐され、売り飛ばされてしまうと焦る。
(いや〜!!)
じたばたと男二人に担ぎ上げられるリーシャは暴れる。
「うわっ!暴れんじゃねェーよ!」
しかし羊の姿ではどうにもならない。声も上げることもできない。(声を出してもメェーで終わる)
しかしリーシャは必死に抵抗する。
「メェ!メェ!メェ〜!!」
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