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リーシャは元々海兵であって、今も海兵として籍を置いてある。
ただ海賊に誘拐された海兵のでもあり、捕われの身だ。
だからといって、本当に捕われているわけでもない。
(あれ、……もしかして私逃げられる?)
今までそんなことを考えつかなかったリーシャは自分の性格にため息をつく。
「そうだよね……」
自分が誘拐されたという事実を忘れていたことは別として、今度島に上陸した時に逃亡を謀ってみよう。
リーシャがぼんやりとそう決めた時。
――ガンガンガン!
突然、扉がある方角から荒々しい音が聞こえた。
「っ!」
明らかにローではない。
そう感じたリーシャは緊張に体を抱きしめる。
すると扉が派手な音を響かせた。
どうやら壊したようだ。
「なんだ、普通の部屋かよ」
「にしても、ちぃーと豪華じゃねェか?」
「確かにな。内の部屋と比べりゃあなァ」
「まァ、ルーキーの船だからこんなもんかもな」
(敵っ!?)
二人の男の声が聞こえてき、リーシャは声を押し殺す。
この部屋に押し入ってきた時点でわかってはいだが。
(怖い!)
男達は部屋を物色しているのかガサゴソと音がした。
もし見つかってしまえば。
そんな恐怖にガタガタと体が震える。
ロー達のように強くなく、死線を潜り抜けたこともないリーシャは自分が弱いことくらいわかっている。
徐々にリーシャがいるシャワールームへと近づいてくる男達。
(いくらなんでもシャワールームには……)
「おい、ここシャワールームみてェだぞ」
「おいおい、呑気にシャワーでも浴びんのか?」
「そんなわけねェだろ」
笑い声にホッとするリーシャ。
しかし、次の言葉に再び体が凍りついた。
「でもよォ、なんかお宝でもあるかもしんねェな」
(……え!)
「あるわけねェだろ」
「宝物っつーのはありえねー場所にあるもんだろうよ」
なかなか鋭いと感じたリーシャだが生憎、宝物ものなんてここにはなく、ただの海兵が一人いるだけですよ、と涙目になりながら心の中で呟く。
(は、入ってきたぁ!)
ついにシャワールームに手をかけた男。
リーシャの姿はまだわからない。
シャワールームの中にいる為、幸いか不幸か外側からは見えていなかった。
「ほらみろ。やっぱり何もねェじゃねェか」
「あーあ、はずれかよ」
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