01
いつものように航海をしている海を椅子に座りながら眺めているペンギン。
彼はこのハートの海賊団のクルーであり航海士である。
「――風が気持ちいいな……」
穏やかな海。
潮風を感じながら目をつぶる。
――バタバタバタバタ!
――ドタドタガチャガチャ!
「……またか……」
ペンギンは騒がしい足音にため息をつく。
(俺に癒しはないのか……)
自分の役割を恨めしく思いながら、これから聞こえてくるだろう声に心の用意をする。
「ペンギンさーんんん!!!」
――やっぱりな。
「はぁ……、今度はどうした……」
本日2度目のため息をつくペンギンは、呆れながらも、涙目でこちらにやってる少女、リーシャに問い掛ける。
「ト!ト!トラファルガーさんがぁっ!!」
「とりあえず落ち着け」
あまりに彼女が興奮している為、まずは落ち着かさせなければ。
「うぅ……、すうーはぁ〜……」
リーシャはペンギンの言葉に深くゆっくりと深呼吸する。
リーシャの素直な行動にクスリと笑みが浮かぶ。
――本当に素直だな。
リーシャが落ち着いた時を見計らい、今度こそ彼女から事情を聞き始める。
「で?何があったんだ?」
「えっとですね……トラファルガーさんが、私のベッドにいつの間にか、その……、寝ていました……」
赤くなりながらリーシャは途切れ途切れに言った。
「……全く、うちの船長は毎回毎回……」
ペンギンは頭を抱える。
「呼んだか」
すると、二人の背後から噂の人物が登場した。
「きゃあー!」
リーシャは悲鳴を上げながらペンギンの背中に隠れる。
「船長……、あれだけ自重してくださいと言ったでしょう」
「……してる」
――嘘だろ。
白々しく言う、この人は、ハートの海賊団船長であり、その首に2億の懸賞金を掛けられているルーキー、トラファルガー・ローだ。
――勘弁してくれ……。
いつもいつもこの人のせいで、なにかしらある。
特に、日々、船長によるリーシャへのスキンシップ。
(たまに海に落としたくなるのは、仕方ないと思う)
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