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「人が多いな」
「人気の観光地だからなー」
「あ、あれおいしそう!」
「本当ですね」
「……買うか」
「え!いや、別にそんなつもりで言ったわけでは――」
リーシャ達は今、温泉の観光地である中心街に来ており、そこにずらりと並んでいる出店を回っていた。
今しがた買うか、と言ったのは、いつものパーカーにジーンズとモコモコの帽子を被って、片方には刀、片方にはリーシャの手を握っているローである。
もちろんのこと、手を解こうと試みたが、あっさりと負けてしまった。
そんな二人の後ろには船員のベポ、シャチ、ペンギンがいる。
もうすでにリーシャとローの、この光景には見慣れているので誰も気になりはしなかった。
そして、リーシャとベポがおいしそうだと話していた店へスタスタと向かうロー達。
そこには看板に大きく『温泉まんじゅう』と掛かれた店があり、長蛇の列が列んでいた。
「人が多いな……」
チッと不機嫌な顔をしながら舌を打つローにリーシャはやっぱりやめておきましょう、と言う。
「……シャチ、並べ」
するとローはなんとでもないようにシャチを召喚した。
「えェ!?俺っ!?」
非難の声を上げるシャチにローはただ不適に笑って目を細める。
「わっ、わかりましたよォ!」
渋々といった感じに従うシャチ。
そんな彼に気遣う人間が一人。
「わ、私も列びますよ?」
「リーシャ〜!」
シャチはマイエンジェル!と叫びながら喜ぶ。
――だが、それを悪魔が許すわけがなかった。
「リーシャ。お前、この前のネグリジェの件を忘れているのか?」
「……!」
悪魔の言葉にリーシャはハッと思い出したようにシャチを見る。
「あれは船長も同罪じゃないですかァ!」
「同罪?結局あれは失敗に終わったんだ。シャチ。つまりお前だけに罪がある」
「理不尽ンン〜!!!」
泣き叫ぶシャチを無視し、歩き出すロー。
手を握られているリーシャも必然的に動く。
リーシャはシャチをちらちらと見ているとペンギンが苦笑いした。
「あいつは大丈夫だ」
「わかってますけど……」
自分の発言はすべて有言実行になるのだとリーシャは思い知ったのだった。
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