15
「ねぇ、シャチさん」
「あ?なんだ?」
最初に話し掛けられた時は軽く化粧をしていたのに、今では更に濃くなっている真っ赤な唇が動く。
「貴方の船長さんの横にいる子だぁれ?」
「あー……――」
(やべェ。答え方わかんねェ……)
リーシャの立ち位置が曖昧なため、彼女のことをなんと説明すればいいのかわからなかった。
「……あいつは仲間だ」
「そうなの……」
まるで獲物を狩るような目でローを見る女にシャチはまたか、とため息をついた。
一応、リーシャに被害が飛び火しないように安全を確保しておこうとその言葉を選んだ。
でも、どう見てもリーシャとローが普通の関係だと見れない。なんせ、今のローはリーシャの腰に腕を回している。
リーシャは気づいていないようだが。
おまけにローはちびちびとお酒を飲んでいるリーシャを愛おしそうに見ている。
(入る隙なんてねェだろ)
今から行動に出ようか見定めている女達にご愁傷様、と先に手を合わせておいた。
***
「さて、そろそろ行くか」
「リーシャか」
「あァ」
ローはリーシャを探しに行こうと立ち上がろうとする。
「トラファルガーさん。お酌しますよ」
「……いらねェ」
あぁ、始まってしまった。
ペンギンは女がローに近づくのを横目で見ながら様子を見る。
女が一度ローに近寄ると他の女もこぞって押し寄せてきた。
(厄介だな……)
ローはいらないと断っているのに、我こそ先にと酒を進めてくる女達。
「いらねェってんだろ」
「そんな不機嫌な顔しないでくださいよ〜」
女達はそう言って、ローに近づき酒を注いだ。
***
怒っているローは更に女達のツボに来たらしく嬉しがれるときた。
(チッ……どいつもこいつも)
そんなものに引っ掛かると思ってるのだろうかか、と眉間が寄る。
抱かれたいと近寄ってくる女は今までもいた。
正直うんざりする。
前のローなら相手がその気ならそのまま夜を過ごしていただろう。
だが、今と昔ではあまりに違いすぎる。
リーシャがいるからだ。
彼女の存在が有る限りローは塵にも、女に興味は湧かない。
弱々しい雰囲気に柔らかい髪。桃色のような唇を見る度、自分の理性と常に戦っている。
しかし、一度味わってしまえば二度と手放せなくなりそうな感覚になる。
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