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「温泉?」

「あァ。なんでも、グランドラインで有名な温泉らしい」

ペンギンがもうすぐ島に着くとリーシャに話し、それからそこの観光地を説明していた。

「美容、健康、様々な効能が体にいいという話しだ」

「そうなんですか。私温泉というものは初めてなんです」

「そうか。俺達は何度かあるからな」

「すっごく楽しみです!」

よもや、自分が海兵で、海賊に誘拐されていることをすっかり忘れているリーシャは天然なので仕方ないだろう。

ペンギンは内心そう思いながら嬉しそうににこにこと笑っているリーシャを見ながら少し苦笑した。

(まぁ、怯えられるよりましか)

リーシャは普通の民間人より更に怖がりなので、船員達は頑張って、怖がらせないようにとリーシャに対しては一段と気をつかっている。

(しかし、船長が台なしにするからな)

ローがリーシャになにかと愛情というものを表現しているせいで、ペンギンの苦労は絶えない。

今回もローは熱い愛をリーシャにぶつけるだろうと、ペンギンは密かにため息をついた。



***



「二回目の上陸かぁ……」


リーシャは段々とこの船旅に慣れてきている自分はどうなのかと疑問に感じた。

(私、海兵なのに……)

リーシャは少し考え込んでしまった。

「行くぞ。リーシャ手を貸せ」

「え、あっ――」

しかし、ローがリーシャの手を掴んだことにより、深く考えることはできなかった。

ローはリーシャの手を握ると、スタスタとその長い足で歩き始める。もちろんリーシャの足に合わせて。

ローの後ろにはぞろぞろと船員達もついてくる。

「船長楽しそうだなー」

「だな。やっぱり彼女のおかげだよな」

「俺船長にバラされなくなったぜ」

リーシャの耳には船員達の話し声が聞こえており、その内容に顔が赤くなる。

(は、恥ずかしい……)

耳が真っ赤に熟れたようなリーシャをローは横目でちらりと見ていた。

そして、次にはニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる。

「キャプテン、なんか悪い顔してるよ?」

「しっ!ベポ、思ってても言うんじゃねェ」

ローを指摘したベポをシャチが窘めた。









「わぁ……、すごい……」


リーシャは感嘆の声を漏らす。

初めての大浴場。もちろん女湯である。

ローや船員達は男湯に向かった。

最初は、温泉の建物へ入り、ロビーへ海賊団が入ってきたときは軽く館内が騒ぎになった。

それもそのはず、海賊であり、ルーキーでもあるローが温泉にやってきたからだ。
「何故海賊がここに」
と周りは囃し立て、恐れる。

だがロー達は素知らぬ顔で温泉があるこの場所のホテルを取り鍵を受け取った。

「ど、どうぞおくつろぎください……」

ホテルの従業員はローに鍵を渡しながら震えていたことを思いだす。

実は部屋を取ろうとしたときに、部屋が足りないと言われ、ローとリーシャは相室になったのだ。
その前にペンギンが「駄目だ。リーシャはベポと相室にしろ」と言ってきて、ローはすかさず職権乱用の如く「断る」と船長としての特権を使いだす始末だった。

(トラファルガーさんと、ど、同室……)

想像してしまったリーシャは顔に熱が集まってしまい、慌ててその考えを消そうと浴場の扉を開ける。

(まずは、体洗わないと……)

体にタオルを巻き、ひたひたとシャワーやシャンプーが備え付けられている場所へ向かう。

(なんか、いろいろすごいなぁ)

リーシャは周りをキョロキョロと見ながら、いそいそと体を流していく。

そして流し終えると、ちらちらと人がいる湯舟へと体を沈めた。

「はぁー……」

――チャプッ

程よいお湯加減にリーシャはほっこりとした気持ちになっていく。

(気持ちぃー……)

「ねぇ知ってるー?この温泉にあの有名なルーキーのトラファルガー・ローが来てるんだって!」

ぽやぽやしていたリーシャは、ふと聞こえてきた声に内心どきりとした。

「え!?まじ?あのイケメンな人だよね!?」

「そう!手配書があんなにかっこいいんだし、絶対実物はやばいよね!?」

きゃっきゃっと騒いでいる声にちらりと見ると、そこには四人のリーシャより年上だろう女性達がいた。

(トラファルガーさん有名人なんだなー……)

そんなことを思っていると、その女性達は更にその話題に盛り上がる。

「一回でいいから抱かれたーい!」

「確かに!私も〜!」

「でも海賊じゃん?」

「この際関係ないって!」

そんな18禁な用語が出てきて、びっくりしながらもリーシャは赤面する。


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