×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
07


「ワンツーワンツー。はいそこ回ります」

どうも皆様こんにちは、ヒロインみたいな登場数を誇るリーシャです。
今、ダンスを練習しています。
勿論貴族ですので慣れています。
でも好きではないです。
何故かというとダンスをするという事は夜会やらパーティーやらに行く予定があるというのをひしひしと感じるからです。

「はい、今日はここまでにしましょう」

と言うのはここの使用人歴が凄く短いシャチだ。
そして、ダンスのお相手はロー。
驚いただろ?しかも結構様になってるんだぜ?
いつから貴族の嗜みを習ったのか知りたいよね。
しかも汗り一つかいていないんだから余計に何か腹が立つ。
こちとら離婚をじきに渡す女だからね。
本当はパーティーなんて行きたくない。
だって、ローが海賊だから男の貴族には穢らわしそうに遠目でみられるし、女にはこんな色男が近くに寄っているから僻(ひが)みと羨ましそうな目で射殺される。
もう血反吐な夜会だ。
ある意味ドロドロとした場所だから血反吐も違和感はないだろうが。
お腹が痛いと訴えてボイコットしようかとも考えている。
イケメン滅しろ×無限。
全国のイケメンとローのファンの皆様すみません。
でも彼は見目が良いから目の保養にはなる。
でも親の敵を見るような視線は耐えられない。
女の嫉妬は閻魔も食えないだろう。

「旦那様、何かお飲みになられますか」

「ああ」

休憩はコテージだ。
前は何かをする前に颯爽と何処かへと行ってしまっていたのに、近くに居る様になった。
やはり、自分が変化したからか。
それともローの思考が壊れゲフゴフ!
取り敢えずコーヒーを入れてクッキーでも摘まもう。

「どうぞ」

「…………」

特に何も言わない男はこちらをジッと見ている。
観察しているとも取れる。

「…………ふう」

座って一息付く。
見られているのを感じるが一々気にしていられない。
タオルを首に押し当て首筋に流れた汗を拭く。

「へェ、色気を感じるな」

「旦那様、妻をそんな目で見るものじゃありません」

「……お前は俺を何だと思ってんだ」

「え?男ですが?」

「まあ……間違っちゃいねェが……」

聞きたかったのはそんな言葉じゃないと目で言われたが、欲しがったってそんなに簡単に言葉をくれてやらない。
いずれ元旦那となる相手にそういう駆け引きめいた話しをするのは時間の無駄だ。
意味深な事を言われても、彼はリーシャを女として見放し捨てた。
だから、自身にとっても彼は過去の人なのだ。
もう人とすら思わない。
リーシャの存在を飼い殺したも同然。
勿論、父親にも償ってもらう、一人の人間の人生を差し出してはした金で売って、甘い蜜を啜ったのだから。
もしかして少しでもローに気が合るんじゃないかと思いましたか?
いいえ、言うなればこれは無関心に近いだろう。
恨んでいるかと言われればよく分からない。
恨むというのがどれくらいの度合いで恨んだ事になるのか分からないし、それに、恨む人生よりも妻と言う契約の鎖を引きちぎるのが先だ。

「旦那様、次にお出かけになるのはいつになりますか」

彼は一度外へ行くと暫く帰ってこない。
恐らくあと半年くらいで原作に沿うならばその後帰ってくる確率は果てしなく低いだろう。
あの寒い土地へ滞在し、王下七武海の称号を剥奪される可能性もある。
ほぼ確実に予想される未来に、彼の音沙汰がなくなる前に早く婚姻関係を破棄してしまおうと決めていた。
だから、猶予は半年だ。

「そうだな……暫く居るつもりだ」

「あら珍しい。別にこちらの事は気にせずお仲間の方々とお過ごしになっても構いませんのよ」

お仲間とは、ベポ達の事だ。
でも、ペンギンとシャチはこっちに居るから仲間と過ごしているといったら過ごしているのかもしれない。
だから、此処に居ると言ったのかもしれない。

「……いや、あいつらは別に大丈夫だ」

こっちは凄く迷惑だけどね。
黒い太文字で呟く。
色々と作業の邪魔だ。
碌(ろく)に帰ってこなかった癖に今更長期に居座られるなんて迷惑以外の何者でもない。
帰ってくれ。
心の中では大反対だが、顔には出さない。
それが妻の勤めだ(違う)。
兎に角鬱陶しいハエだと思って気にとめない事にした。
それにしてもローの発言から仲間の信頼を感じる。
ペンギン達は顔には出ていないが心の中では嬉しい涙でも流しているのだろう。
その良心がちょっとでも結婚生活にあったのならば、少しくらいこれからの冒険の手助けくらいはしてあげたのに、誠に残念だ。
別に愛してくれと言っている訳ではない。
ただ、こんなに寂しくて虚しい生活に押し込めないでと思っているだけだ。
今更何を言っても無駄なのだが。
言っても彼はこちらに笑顔も良心も向けてはくれないだろうな。

「ふふふ。それはそれは……さぞ楽しい居場所なのですね」

僻(ひが)んでないよ、羨ましいだけだから。
このクソヤロウ。



prev | next

[ back ]