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04


さて果て、旦那(仮)が帰ってきた後はそのままお別れかと思いきや夕方のお茶会、又はティータイムに移った。
話しをしようと言われ、仕方なく付き合う事にしたのだ。
自身の中ではまだドールプレイは続行中なので無言である。
凄くない?つまりまだ一言も言ってないんだよ。
なのに、怒るでもなく涼しい顔をしてコーヒー飲んでるんですよ目の前の人。
お茶会なのにコーヒーなところも凄いけれど。
因みにリーシャはストレートティーはあまり好きではない。
ミルクティーがどちらかと言えば好きだ。
結構若くして死んだから味覚は大人使用になりかけである。
ちゃんと男女のイロハだって知っています。
けれど試す相手がおりません。
可笑しい、学生時代の保健体育の成績は悪くなかった筈なのに。
閑話休題。
嗚呼、そういえばこの『閑話休題』と言うのは本来の話しに話しを戻す。
それは置いといて、話しを戻そう、という感じの意味である。
別に今の説明は忘れてくれて構わない。

「静かだな。いつもは煩い様に何か言ってくるか怯えていただろ」

(それは単に結婚相手が海賊だからでしょ。ていうか、そっちこそ話しかけてくるなんて珍しいと言い返すべきか)

恐らく話しかけてきたのはシャンデ、もといシャチがローに何かしらの報告をした為と推測される。
十中八九当たりだろう。
きっとこの男はリーシャが部下をまんまと屋敷に入れた事を知らないとでも思って、良いご身分で居る。
でも、それも含めてこちらの手の平の上であって、別に困る事はない。
メイドも居るし、今の生活に不安があるとすればそれはローだけだろう。
でも、リーシャの野望の一つに貢献して貰ってから別れた方が無駄婚に思う気持ちが少しだけなくなる。
それに、今貴方の計画を知っていますよと囁いたらシャチとペンギンもセットでとんずらするだろう。
ローの計画といえばやはりパンクハザードのスライムの件だ。
スライムは関係なかったか。
まだシナリオまで一年と半年くらいはあるからそれまでにこちらの野望を完遂したい。
こんな衰退しているのか発展しているのか分からない世界だが、己が金字塔を打ち立てる事を一度はしてみたいと憧れる。
先程からローが何やら話しかけているが話を全く聞いていなかった。

(やば、どうしよっかな)

聞いてなかったと言ったら怒られて首チョンされてしまうだろうか。
は!そういえばローの能力は死なないからされても割と生きてられる。
だったら無理に聞いてなくても大丈夫だ。

「聞いてんのか」

(聞いてないって言ったのに……心の中で)

ふふふ、と心の中では笑い、外面は大変無表情である。
ローは比較的優しい方の海賊だと原作でも夢小説でも解釈されているし、リーシャもそう思う。
いくら興味がなくても自分は女だ。
手を出さないだなんて結構理性的な人だとは思う。

「旦那様。女性の部位で好きな所はどこですか?」

「……旦那様?……何だその質問は」

凄く困惑されております。
そうだろう、女がいきなり呼んだ事のない旦那様呼びをして好きな〜という珍妙な質問を掛ければ誰だってびっくりする。
ローは顔芸が大変達者だ。
訳の分からないと言う顔をしている、笑えた。

「手ですか足ですか胸ですかどこでしょうか?」

「……特にねェ」

「……成る程、節操なしですか分かりました」

「な、せっ……!?」

ローが何か言い掛けた時、ガチャンと音がした。
振り向くとシャンデと……名前が長くてペンギンの偽名を忘れてしまったのでもうペンギンとシャチでいいかな?
その二人が今にも死にそうな顔でこちらを見ていた。

「おおおお、奥様、せ、節操なしはさすがに……その」

ペンギンが話しかけてきた。
無闇に会話に入ると貴族なら即刻クビだからあれ程止めなさいと……心の中で言ったから伝わる訳もないけどさ。
彼等の言いたい事はよく分からないけれど。

「?……別に嫌味ではなく褒め言葉として言っただけですわよ?」

「え!?褒め言葉!?」

「今のが?節操なしが!?」

シャチとペンギンの順でツッコまれたが褒めたものは褒めた。
そっちの方向では凄く褒めている。
これで沢山妄想にひた走れるぞ。
わくわくすると顔に出ていたのかローは静かに目を閉じた。

「何が起こったんだ、おれの居ない間に……」

なにがって、がっつり前世と今世が融合しただけだけど。










薄暗い部屋の一室でロウソクを灯す部屋でカリカリと羽ペンの刻む音が静かな場所で響く。
時折手先で零れる髪束を耳に掛け、その度に集中していた体を緩ませる。

「ふう……今日はこの辺にしとこ」

誰も居ない部屋で呟く度にふと、話し相手が欲しいな、と馳せる。
こんな世界で貴族なんぞではなく海賊とか、兎に角自由な職業に就きたかった。
まあ、海賊が職業かは不明なのだが。

(海賊か〜。いいな、私も宴したいな)

入るのなら無論麦藁海賊団が良い。
確かにローも人気だからハートの海賊団に入団したいという子は現代に沢山居た。
今もその願いを持っている人だって絶対に居る。
でも、妻になって色々と現実が襲ってきたわけで。
自由も何にもない。
娯楽は貴族の嗜(たしな)みである黒いお遊びばかり。
清い貴族なんて居るのかやら。

(ん?待てよ……)

奴隷という言葉に閃きがチカリと光る。

「奴隷か。その手があったっ」

ただ特徴を捉えてメモをしているだけでは野望までは届かない。
これは幸いだと嬉しくなりながら席を立ちベッドへ向かう。
これは明日からまた忙しくなりそうだと目を閉じた。



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