ウェディング3(完結)
男は皆が見ている中、ステンドグラスに照らされて公開プロポーズバージョン2をする。
彼女はそれに涙を流して受けた。
それを見続けるのも流石に疲れたので試着室へ行き着替えた。
外へ出るとローが待ち伏せしていた。
待ってなくても良かったのにと言うと彼はなにも言わずに能力を展開し、どこか知らない建物の上へ移動させた。
突然のことに驚いていると彼はスッと指輪を出してきた。
最初に買ったものではない、もっと高そうなものだ。
いらなくなったというのはそういうことだったのだ。
「私に?」
「ああ」
「今更?もう貰ってるのに」
結婚した時に形式的に渡されてそれきり、指に填まっている。
「今と昔では違う」
「違う、とは?」
「なんだと思う」
ローの目を見て久々になにも言えなくなった。
その瞳は真剣で、男を感じさせた。
「私に惚れたとか?」
いつもなんだかんだで口説いてくるので。
当たりも外れもどちらでも構わない。
「おれにお前が惚れたの間違いだろ」
クッと笑みを浮かべ悪い顔をする。
「なにそれ!」
ぎろりと相手を見上げればそこには指輪が見える。
そして、己の手先を見て指輪を抜く。
「じゃあ、昔のものは貴方が持ってて。私を試みなかった戒めよ」
ローに渡せば彼はそれを受け取りしまうと、今度はリーシャに新しい方をつけさせた。
「これはおれのものという鎖だ。外したら後悔させる」
もうちょっと言い方を考えろとドツキたくなるが、この指輪に免じて許す。
なぜならば好みの形をしているからだ。
いつの間に図ったのかサイズまでぴったりなので悪くない。
「へぇ。やりますわね」
「素直な時はとことん素直だな」
「一言余計ですの」
つけられた指輪を太陽に翳してからじっくり眺めた。
「たまにはこういうのも悪くねェな」
「あら、海賊の台詞ではありませんね」
クスッと笑って同意した。
下で部下達がローの名を呼んで探しているのを見つけて、降りてあげたらどうだと尋ねる。
そうだな、と彼はリーシャを抱えるとビルの上から飛び降りた。
そういうところが非常識、マナーがないと思うんだ。
「あ、船長にリーシャ」
探していた人が見つかり船員達はホッとした顔になる。
「帰るぞ」
まだ船は動かせないので何日か滞在することになる。
「旦那様はタキシードを着てくれないのね」
「おれにあれを着ろと?断る」
確かにそれを着たら笑いながら写真を撮って海軍本部に送りつけるだろう。
ウェディングドレスを着られただけで満足ではあるが、いつか式も体験してみたいものだ。
チェーンの感触を確かめながらキラリと光る指輪を見て、密かにそれを優しく撫でた。
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