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ウェディング2


今にも追いかけてきそうなローに早くしないと行きたい店が閉まる、と告げた。
何度も人にぶつかりそうになるが目当ての場所、ウェディングドレス試着所へ急ぐ。
夢にまでみたドレス!
何度着たいと思ったか。
着せてもらえそうになかったので諦め気味だった。
自分の意思で自分の着たいものを選ぶ。
想像しただけでたまらん。
試着出来る会場へ着くとローを待たずして入った。
何人かいるが、支障なし。
うふふ、と笑いドレスを見る。
向こうには協会があるので簡単なものではあるが、挙式が出来るらしい。
なんて幸せな時間なんだと選ぶ。
絞りに絞ってなん着か着てから一番しっくり来たものに決めた。
教会へ行くとローと船員達が居た。
合流するほど時間が経っていたのだと思えば納得だ。
近寄るにつれて別件でなにか騒がしい。
ロー達はロー達で固まっているので無関係な感じだ。
巻き込まれぬように見ていると男が女を宥めている。

「お、似合ってんじゃねェか」

船員にほめられて満更でもない。
やっぱりウェディングを着たらこうでなくては。
盛り上がっていると一際甲高い声がこだまする。

「なんでよ!今日しなくちゃもう来れないかもしれないでしょ!」

「だから、頼むよ。無理なんだ」

「今になってなんでそんなこと……もしかして!他の女なの?だからやめようなんて言うの!?」

「違うよ」

「もう信じられない!最低!浮気者!」

なんだなんだと周りも見始めた。
花嫁らしきウェディングドレスを身に纏う女がこちらへやってきた。
リーシャにぶつかりたたらを踏む。
女はこちらを見て、ローも見ると追いかけてくる男を振り返る。

「浮気者!貴方がそのつもりならっ。私はこの人と」

ローの腕を組んで。

「結婚するわ!」

あろうことか、真横からこんにちはしたのだ。
なので。



「お前が言うな!」

――ビュ

――ドス!

リーシャの特注品武器、チェーンが純白の花嫁のべんけいの泣き所を激しくワンキルしたとしても、顔を狙わなかっただけ感謝してもらいたい。

「ひぎいいい!」

女にあらずな声を出して地面にはらりと白い布を広げ、落ちる様を冷えた瞳で見る。
うぎゃあああ。
あしがー、とのたうち回る花嫁にタキシードを来た花婿駆け寄る。

「なんてことを!」

「なんてことを?」

リーシャはチェーンを鳴らして懐にしまう。
もう必要ないだろう。

「人の旦那と浮気します宣言は、なんてこと、の範囲には入らないとでも言いますの?」

ど正論に花婿のお口は閉口。

「だ、だが、それは勢いで」

「お黙りになって?」

ピシャリと有無の言えぬ言葉で言わせない。

「荒ぶった自分の女一人に手こずる貴方では私の敵ではなくてよ」

花嫁のブーケが側にあったのでそれを手に取りくるくるとまわす。

「あ、それは私の」

弱々しく呟く女に視線をやらない。
さっき男を女は詰った。

「先程、貴方たちの痴話喧嘩を聞いておりましたら、貴方は彼を詰っていましたが、人の男をかっさらおうとした時点で立場が入れ替わったのはお分かり?」

花嫁はハッとした顔をして花婿の顔を窺うように見る。

「僕は気にしてな」

「甲斐甲斐のない男の声が聞こえるのは不愉快だわ」

男が完全に膝を着く。

「おい、それくらいに」

船員達が挟まってきた。
そんなに挟まりたいのなら洗濯して干してやろうか。

「それに、花嫁なんだからもうちょっとだな」

気をつかったらどうだ。
その宥める声にぶちギレた。

「お前らが言うな」

ブーケをくくりつけてチェーンを振り回して船員達がぎゃあぎゃあと逃げる。
おれ、花粉症なんだと鼻水を出し始めたのを見て冷静になった。
ローの花嫁に優しくなかったのにブーメランじゃね?となる。
最初、絶対にローの結婚相手を良く思ってなかっただろう。

「人のものを取る前に言いわけくらい聞きなさい。貴方も貴女もどちらも浮気済みなのよ」

「いや、僕はしてな」

「それもそうね」

花婿の言葉を花嫁がぶったぎり始めた。
花婿の精神が試される。

「ねえ。なんで結婚式をやめようなんて言ったの?」

漸く弁解を聞いてもらえると弱々しい声で話し出す。
ローはというと聞かなきゃダメなのかという顔で見ていた。

「指輪が用意出来なかったからだ」

「え、でも」

「君がよろこぶものを選ぼうとしたらどんどん深みにはまってどれを買えば良いのか分からなくなって」

ダメな男さ僕は、と最後にいうのでなにを当然のことを言っているのだと言おうとしたらローが口を塞いできた。

「お前がなにか言うとややこしい。もう言うな」

そう咎めると彼は花婿におい、と声をかけてピンっと指先で何かを飛ばす。
それをヘタレ男が掴む。
あ、あれは、買った指輪。

「えっ。いや、え?」

「もう必要なくなったんでな」

ローはかっこよく告げて花婿は返そうとするので付け加える。

「男ならこれよりも良い指輪をやるから僕と結婚してくれますか、くらい言いなさい」

男はその言葉にスッと表情を引き締めるとその場で躊躇なくひざまずく。
周りから野次馬がきゃああと黄色い声を上げる。
うんうん、わかるよ。
憧れのシチュエーションだもん。



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