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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
03


ペンギンに質問されてから数日後、庭師として役割を果たしてもらっているシャチと庭でバッタリ出会った。
まあ庭師なのだから当然だが。
何故か告白される手前みたいな様子でソワソワとこちらを見ている。
まるで純情ボーイかとツッコミたくなる。
ちょっと不審な態度である事を注意すべきなのだろうが、こちらとて気になるのだ。
少しばかりせっついてみようか。

「シャンデさん。お仕事はいかが?」

「…………?……!、あ、シャンデ俺だ!」

偽名を呼ばれ慣れていないのだろう、今彼は自白した(笑)
と笑っている場合じゃない。
ここまで天然な彼のある意味うっかりな発言をスルーしてあげるには、天然を装わなければいけないのだ。
頬の筋肉がひくりとなる。
ほほほ、とお嬢様フェイスで聞こえなかったフリをして再度尋ねた。

「シャンデさん、仕事には慣れましたか?」

「はいっ」

とっても良い返事だ。
でも、次からは墓穴を掘らないで欲しい。 
そして、ローよ、何故密偵にこの子を起用した(真剣)。
ペンギンだって海賊女帝に骨抜きにされるムッツリなのを知っているんだぞ。
明らかに人選ミスだ。
もしリーシャが前世じゃなくて今世のままだったなら既にスパイとして干されていたであろう。
でも会話は普通に楽しい。
探ろうとかいう魂胆は今の所片鱗すらないので、早く聞かれないかと楽しみにしている。
こんな心の中を知られた日には、彼等は盛大に身を引くように何処かへ飛んでしまうかもしれない。
それは寂しいのでまだ止めて欲しい。
本当は心から話せる友達が欲しいのだが、貴族でありトラファルガー・ローの妻である限り疑心暗鬼は無くならないだろう。
そういえば、しょうもない父から(貶している)手紙が来ていた。
今思い出してシャチに聞いてしまおうと会話を変える。

「それで、先程から聞きたい事があるみたいですね。気兼ねなく聞きなさい」

「えっ、そ、そんな……えっと」

思いっきり遠慮したかと思えば聞いてくる気が満々なシャンデに苦笑する。
遠慮してる癖にしたたかだな。

「実は……奥様が噂と違い優しくてとても日々が充実しています。是非奥様が心を和らげた方法を俺にも教えていただきたい」

「まあ……それは嬉しいわ」

(とか柔らかく言ってるつもりでも目は鋭く光っている無自覚アサシンのシャチくんでした!)

その探る目は止めた方がいいよ。
貴族は特にそういう腹を探る真似に敏感だからさ、と内心あーあと勿体ない所業に溜息を付く。
変な所でミスをする癖に何故こんな事を言ってくるのか不思議だ。
そして、お待ちかねの疑心暗鬼な質問に胸をたぎらせる。
スパイっぽい事をやっと掛けてきたか。
さてさて、こんな質問が来るだろうと予期して考えておいた答えを口に出す。

「私はメイス家の一人であり、一人の男性の妻……と虚勢を張るのも疲れたからよ」

「虚勢?奥様が?」

普通は使用人がこんな風にズケズケと内情に入ってくるとクビとかのレベルなのだが、それに気付かない彼等には使用人と言う設定は合わないだろう。
全てが終わった後に教えて上げようと心の中の予定に書く。
女は秘密がある程魅力的、という言葉に習って「ふふ、これ以上は秘密よ」と笑顔で終わらせた。










またまた数日後、ついにこの家の大ボスであるローが帰還した。
実は手のひらでコロコロと転がしているのはこちらというのに気が付いていない彼等を見ているのはちょっぴり楽しい。
例えば派手なドレスを着ていたりするのも、シャチがローに先日の事を報告しているだろうと予想してる事も全ては計算した上で仕組まれているなど。
きっと彼等は知らない。
うっかり自分を殺してしまいそうなフラグと芽はしっかり摘み取っておきたいのだ。
それを見届ける前には彼と自分は夫婦ではなくなっているだろうが。
あんな意味深な事を言ってローの興味を引かせないか、だって?
勿論それも計算通りさ。
うっかりと防止と同情を集める為の一手間だ。

「奥様、旦那様がお帰りになられましたよ」

「分かったわ」

「私達も紹介した方が宜しいでしょうか?」

彼女達は最近雇ったメイドだ。
きっと、帰って来たのが彼(か)の死の外科医だからか不安が滲み出ている。

「貴女達が良いと思う時で良いわ。無理にする必要はないです」

そう口にするとホッと息を吐き出す。
ストレスフルな事をさせる程リーシャは鬼畜ではない。
でも、ローが何か変な事を言ったのなら般若にでも鬼でも修羅にでもなってやる。
女はただ家に留まる事が使命ではない。
こんなに頑張って家を切り盛りして結婚までしてあげたのに、帰ってくるのは月一とかふざけんな。
思わず本音がおっとっと。
しかも浮気してもいいだと?
このリーシャ様を舐めすぎだ小僧。
精神年齢は貴様よりも上なんだよお。
一体どんな面下げて帰ってきたのか見てあげようじゃないか。

「…………」

無言でこっちに来ましたありがとうございます。
本当、期待を裏切らない程政略結婚感がする。
仕方なく帰ってきたオーラが凄い。
え、これおかえりーって言わないとダメですか?

「…………」

もう、何て言うか帰って欲しい古巣に。
ほら、君潜水艦持ってるじゃん?
もうそこに帰ってくれよ。
そして二度と此処(ここ)へ帰ってこないで。
あ、離婚届の判子だけ置いていってよ。
なんて心の中で清々しい未来を想像する。
無言な旦那とか誰得だよほんと。
たまに、無言で希にデレる人は胸きゅんなんて話しがあるけど、あれリアルに好きな人限定だと思う。
政略結婚で明らかに恋愛結婚してない夫婦にはブリザードしかないね。
べ、別にブリザードが不愉快とかそういうんじゃないんだからねっ、とツンデレを擬似体験してみた。

「…………ついに何も言わなくなったな」

クスリと笑うようにこちらを見るロー。
開口一番がその言葉とか、自分Mじゃないんすけど。
喜ばないんですって旦那さんよ。
貴方、お飾りの妻が望ましいんでしょ。
だからご希望に合わせてドールプレイを実行したのに。
頭の中が中学生な思春期リーシャさんたあー私のことだ!
と、一人ドヤ顔を決めてみた。



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