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02


さて、先ずは使用人を丸っと交換から行こうかな、と腕捲(まく)りをする。
目の前には書類が山詰み。
手には判子。
もうここら辺でお分かりだろうか、そう。

「父親の息が掛かった使用人が居ると、これからの計画の邪魔になるんだよね」

この屋敷にいる使用人やメイドは全員漏れなく父親の手付き(深い意味は無し)なのだ。
だから、何か不審な事をした場合即刻父親の所へ報告が行く。
そんな息苦しい屋敷で何かをするなんてとんでもない。
なので、使用人をツルッと総入れ替えする予定だ。
先ずは募集の前に使用人のクビと次の就職先を案内する。
まあ、今世のこの子に友達なんていないから、紹介先はあくまで募集を掛けているお屋敷等だ。
それと同時に此処のお屋敷の募集も掛けるつもりでいる。
自分で出来る範囲では自分でしたいので使用人は二、三人でいいだろう。
掃除なんて使う部屋だけでもう十分だ。
お屋敷にこんなに余分な使用人が居るのはリーシャを見張っているというのもあるが、それと同時に夫のトラファルガー・ローも逐一見張られている。
しかし、彼は賞金を無効にされたがそれでも億越えの賞金首だから簡単に使用人を撒けるし、見られないように行動する事だって朝飯前。
トラファルガーの姓を名乗るのも凄く凄く違和感を拭えないが、前世と同じ名前なのは馴染みもあってホッとする。
それにしても、彼の船の船員達も良く結婚に納得出来たな。
否、本当はしていないのだろう。
そんなのは当然だ。
利用するだけだから結婚はノーカウントだ、なんて言っているローを想像するとしっくりきた。
きっとそんな感じの台詞でも言って船員達を納得させたのだろうか。
なら、こっちだって好きにやらせてもらおう。
夫の居ぬ間に、と薄ら笑った。
そして、後日使用人を全員解雇したのだった。
何、今までの自分の我が儘のレベルを思えば全く違和感も不信感もない。
おほほ、と何かを言われても笑えばいいのだし。
それよりも、使用人募集の際に直ぐには集まらないだろうと踏んだのに、何故か二人も面接を希望してきた。
いきなり使用人を解雇する貴族の家で働きたいだなんて変人で物好きだな、と感想を抱く。
そして、当日に会った。
勿論使用人の主人なので直々に面接官として試す。
もう使用人は居ないので自分しか見る人が居ないというのもあったが。

「ペンダリオンさんに、シャンデさんね。一人ずつお好きな順で面接室に入ってきて下さい。終わったら呼びます」

はい、ありがとうございます。
貴女達はトラファルガー・ローの船員、シャチとペンギンですね。
二人共私服で帽子を被っていないが片鱗がある。
それに一番印象的なのはやはり名前か。
何故名前の始めを取って格好いい名前を付けたのかと内心笑った。
そして、何故結婚相手の住む屋敷に潜り込んできたのだろうかと疑問に思う。
ローに探ってこいとでも言われたかな。
じゃあお前が帰って来いよ先に、と彼に言いたいが。
何も探る事なんてないのに。
おかしな事を始めた彼らに退屈だし、何より面白そうだから採用する事にした。
でも、海賊の一員である彼らに使用人めいた真似が務まるのか。
そこはまあやってもらうしかないかとお手並み拝見である。
ついでにメイドも二人雇った。
服もヒラヒラしているのは外出する時だけで室内様に揃えようとこれからの生活へと準備を進め始めた。
時間はたくさんある。
何せ、ローが一ヶ月毎に帰ってくるのは一回あるかないのかなのだから。
結婚したがあくまでお飾りの妻という訳だ。
初夜を無視される前から分かっていた事だから寧ろ万々歳。
好機として着々と離婚の準備を進められ、彼に捨てられるのではなく捨てる側として報復出来る。
別に嫌な事をされた事はないが、乙女の結婚を利用するなんて自分としては許すまじ、という具合だ。
貴族だから政略結婚は当たり前?
今の私は結婚を夢見る女の一人なんだよっ!
こんな結婚、結婚とは認めません!
離婚しても貴族なら結婚相手はわんさかいるだろうし、前世の性格もあれば我が儘姫なんて言われて敬遠される日々もおさらばだ。
そして相手とイチャイチャラブラブ、略してイチャらぶな人生を送りたい。
妄想は留まることを知らないのだ。 
自室で奮闘しているとノックが聞こえたのでどうぞと許す。
入って来たのはペンダリオン(本名ペンギン)だ。
紅茶を持ってきてくれたらしい。
こうして、密偵のような事をされても痛くも痒くもないのは、以前働いてた使用人が一人もいないからだ。
人の口に戸は立てられない。
これが一番の理由である。
知る者がいなければ隠す事も可能だ。
外で何かを聞いてきても家の中にいるリーシャとの性格のギャップに混乱するだけだ。
噂はあくまで噂。
信憑性なんて信用しないのが普通なのだ。

「紅茶をお持ちしました」

「ありがとう」

海賊の一員にしてはマメな人だ。
あ、そういえば自分は実はこの世界の作品を知っている。
そして、夢小説も網羅しているのだ。
どんな性格の彼らが来ても平気だったりする。
それにしても、彼もシャンデ(本名シャチ)も大分ここの生活に慣れてくれた。
リーシャの性格も分かり始めている。
最初はとても困惑していた。
ここでなら普通は噂で知ったのだろうかと推測するが、ノンノン。
リーシャは知識有りの転生なので分かる、きっと船長のローにここの女は我が儘だ、気を付けろよ、とでも言われたに違いない。
彼等の「え、聞いていたのと全然違う!」という変顔を見るのは大変楽しかった。
退屈を紛らわせると共に二人の性格やノリの良さも計れたので満足だ。
頬を緩ませて思い出しているとペンギンが何かを言いたそうにしていた。
面白くなる予感にどうしたの、と聞いてみる。

「奥様は、旦那様をどう思っておられるのでしょうか」

聞きにくい質問ランキング上位に食い込む質問をあっさりと聞いてくるので肩が揺れそうになる、主に笑いで。
恐らくその質問は個人の疑問なのだろう。
ローが聞いてこいと言うにはあり得なさそうだ。

「どうって……特に言うことはないわ」

なので無難な返事ランキング上位の言葉を選んでみた。



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