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- ナノ -
01


もしもこれが小説ならば、ここに一組の夫婦がおりました……と出だしが始まるのだろうか。
もし自分なら夫婦の前に(仮)を付け足す。
嗚呼、そんな言葉では、何故そんな事を言い出すのか周りは理解出来ないと苦笑する。
先ずは自身の自己紹介といこう。
とある世界の海軍と呼ばれる組織の一人の娘として生を受けた。
それから甘やかされて育ってきた。
なので、我が儘でお馬鹿で間抜けで頭のネジを生まれてきた時に落っことしたとしか思えないような頭の悪さを兼(か)ね揃えた女−−それがリーシャという性別メス、己である。
何故自分をここまでこコケに出来るのかというと、ある意味前のリーシャは別人で他人という表現に相応な人間だからだ。
そう、俗(ぞく)に言う前世の記憶持ちという奇っ怪(きっかい)なせいである。
ぜひ、頭がイかれた等という現実味のある事を考えるのは出来れば止めて欲しい。
なんせ切実(せつじつ)さと真面目なお話しだからだ。
そして、此処が一番重要なのだが、記憶が戻った時には既に既婚者でしたという笑えない事実。
もういっそ笑ってくれ!
いや、涙が出るほど泣き笑いしてしまいたい。
家事や家の事を任せているメイドがいるので心の中でしか悲しめなかった。
しかし、問題はこれだけではなかった。
神様は何を考えているのやら。

(七武海の生け贄に宛てがうだなんて……)

何故七武海に捧げたんだ海軍よ。
君達は天竜人とか言う大金持ちを独占して、契約しているからお金には困っていないだろうに。
さては海賊という犬に首輪を付ける為なのかな?
でも海賊であり無法者の彼らをそんな書類上の物だけで縛れるとは思えないのだけれど……。
バーソロミューくまみたいに弱みを握るならば話しは別なのだが。
それに、お相手は自分なんて眼中にないくらい結婚なんてどうでも良かったみたいだ。
所謂(いわゆる)政略結婚の当日の初夜に当たる時間に相手は「夫婦の関係を望んでねェ。浮気もしたけりゃ好きにしろ。だから一切こっちにも干渉してくるな。精々(せいぜい)夜会やそっち関係のパーティーがある時くらいに夫婦って奴を演じてくれりゃあ良い。部屋も別だ。何かを押し付けるな。俺は船で寝るからお前は好きな所へ寝ろ」と、言いたい事だけ言って初夜を放って脇目も振らずに帰っていった。
勿論この事は記憶が戻る前なので今世の彼女はプライドをベキベキに折られて憤慨(ふんがい)していた。
でも、相手は海賊で四億の賞金額だった賞金首。
あれやこれやと怒鳴る勇気など無く悔しい気持ちでいっぱいだった。
だが、前世の自分にとってはラッキー以外の何者でもない。
こうして純潔(じゅんけつ)を奪われずに紅茶を飲んでいられるのだ。
このまま無関心でいてくれれば尚(なお)良い。
それに、家に帰ってこないのならば好きに過ごせる。
だから離婚もスムーズに出来る、という事だ。
こんな人生はやっていられないので速やかに離婚してもらおうと今、画策している。
父親(前世の自分にとっては最早赤の他人という認識)が何と言おうと我が儘なお嬢様をある意味合いで利用して、徹底的に叩き潰すつもりで話し合おう。

(それにしても今世の私はよくこんな結婚我慢して出来たな)

我が儘な癖に何故か拒否らなかったのがとても不思議だ、と自分でも思う。
でも、今世の自分も前世の自分も己なので気持ちははっきりと分かっているし、熟知(じゅくち)している。
自分の心、自分知らずと、今世はこんな女だ。
でも、少なくとも前世の自身はこんな鳥籠の人生は真っ平御免だと思っている。
息が詰まるし、全く遺憾(いかん)だ。
相手は乱暴者ではないが、リーシャという地位のある存在を夫婦となって利用してしまう程には権力を欲している。
そんなに欲しけりゃくれてやる……探せ!
おっと失礼、つい思考がプロローグに飛んでしまったようだ。
休憩をちょこっと挟もう。
嗚呼、そう言えば旦那様で夫で海賊で七武海の婿(むこ)の名前をまだ紹介してなかった。

彼の名は、











ドヤファルガーだ!





おっと間違えた、トラファルガー・ローだ。



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