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それから帰りもいつローに体を求められないかドキドキしながら夜を迎えた。
けれど、特別何かをしてくる事はなかったのでぐっすり寝ていたのだが、稀に朝になって起きようとすると日課になりかけているローとの添い寝に寝ぼけているのか胸に手を当てて軽く触れてくる。
揉むとまではいかないかもしれないギリギリの行為に必死に手を退けて朝から体力を削られるのが辛い。
一緒に寝ないとソファーで寝たのに朝になるとベッドに寝ていてローも寝ていたなんて事も最終日にあった。
帰りは行きより少し遅め移動していたのであと少しという所には夕方になって日も落ちてきている頃。
そんな時、目を閉じていたローが唐突に目を開いた。

「囲まれてる……おい!」

馬の手綱を引いている男に声を掛けた。
男はローに馬を止めろと言われて慌てて手綱を引いて移動する事を止める。

「お前は此処に居ろ。直ぐに終わらせてくる」

ローはリーシャに言い付けると音もなく扉から出た。
御者も困惑しているが、ローの言葉を信じて待つ。
彼は七武海だ。
信憑性はずっと高いと確信しながら目を閉じると男達の声が聞こえて脳裏に小説や新聞の内容が思い出される。
残念な事だが、前世よりも治安の悪い世界だから夜盗も追い剥ぎも居るのだ。
考えに浸っていると騒動も何も聞こえなくなっていたので目を開ける。
きっともう片付けたのだろう。
彼の能力は人を殺すものではないので気絶でもさせたのだと自己完結。
扉が開いて馬車へ乗るロー。
やはり、夜盗では敵にも運動にもならなかったらしい。
少し息を吐き出して馬車の御者に馬を動かすように言う。
全く息も乱れていない。
パンクハザードの戦いがどれほど激しかったのか分かる気がした。
息も乱れて血も流れて、心臓を握られる度に呻き声を上げていたのだ。
さぞかし激戦だったのだろう。
ローはリーシャが見ている事に気付いてこちらを向く。
目が合うと、視線で何だと問いかけられて「別に」と窓に目をやる。
此処はもう暗くて周りが見えない。
やられた夜盗も見えないので少しだけでも見たかったような見たくなかったような気持ちに内心笑う。
表面上では無表情でいた筈なのに、いつの間にか隣にローが座っていて驚く。

「気になるなら言え」

「ありませんわ」

「……俺との結婚が政略的だから言えないのか」

唐突に始まる何かに「は」と呆ける。
今更何を言い出すのかと思えば。
失笑したくなる衝動を抑えてニコリと笑う。

「とんでもありません。旦那様。私は旦那様と結婚できて嬉しく思っていますわ。ええ」

(真っ赤な嘘ですけどね)

きっとローもその嘘に気付いているのだろう。
だって今まで散々彼に政略的結婚だの、干渉してこないで、等という言葉を言ってきたのだから。
ローは少し黙ってから改めてこっちを見てから見つめてきた。

「全部、無かった事になればいいのにな」

そう述べる声音はいつもよりも沈んでいるように聞こえた。



眠りこけていたらしく、起きたら自分の部屋に居た。
どうやら運ばれたようだ。
丁寧に布団もかけてある。
呼び鈴を鳴らしてメイドを呼ぶとお風呂の用意をしてきて欲しいと頼む。
メイドは畏まりました、と頭を下げて部屋を出ていく。
それを見送ると周りを見回して自分の荷物を見つけて近寄る。
まだ荷を解いていないので中に色々と入ったままだ。

「奥様」

部屋をノックする音と呼び掛けに答えるとシャチが現れた。
室内に入るとシャチは「おかえりなさいませ」と言ってくれる。
その言葉は何度も言われているけれど、今までと比較してからその声音が本当に帰還を喜んでいるのだと感じられた。
彼が嬉しそうなのはローが帰ってきたからだろう。
決してリーシャに向けての声ではない。
気落ちしているのか、疲れているのか、後ろ向きな考えが浮かんでくる。
それをどうにか隠して「ただいま」と告げた。
家は何のトラブルも無かったかと聞くと肯定が帰ってくる。
そりゃ、シャチとペンギンが居ればそこら辺の警備よりもずっと心強くて頼りになるだろう。

「シャンデ。貴方にお願いがあるの」

ふと、前々から考えていた作戦を思い出してから彼に頼む。
とある物を用意するようにと頼むと彼は疑問の顔をしながら了承する。
部屋を後にするシャチも見送ると荷物を整理する為に体をグッと解した。



翌日、リーシャは朝から忙しく働いていた。
前に思っていたバイトではなく、屋敷のキッチンで作業を繰り返していた。
シャチに予め言っておいた材料を揃えてから腕まくりして、せっせとレシピを間違えないように作っていく。
とある料理なのだが、ローへと渡すつもりである。
この数日、確実に距離を縮めてしまうという失態を繰り返した汚名返上だ。
好感度を兎に角下げなければと意気込むと出来上がった物をキッチンに並ぶお皿に並べた。
ふう、と滲む汗をハンカチで拭くと我ながら力作だと微笑む。
ふふふふ、と不気味に笑えてしまう自分。
周りに誰も居なくて良かった。
出来上がったものをメイドとシャチ達に運んでもらおうと彼等を集める。
こういう時の電伝虫というのは便利だ。
未だにそれを体内に入れるという事は生理的に出来ないが。
ナミが胸の中に入れているのを見たときは驚いたものだ。
電伝虫は小さくて持ち運びも楽である。
自分なりのマイ電伝虫も作れるし。

「これを運んで貰えるかしら」

皆に言うと彼等は嫌な顔をせずにいそいそと運んでくれる。
最後の一皿は自分で運ぼうと手に抱えるとキッチンを出て廊下を進む。
五歩程歩いた時に靴がつんのめって転びそうになった。

「あ!」

お皿も作った物も駄目になる。
と、半ば諦めて転けるのを待つと誰かに抱きかかえられた。
お腹に圧力が掛かってフワリと立たされる。

「気を付けろ」

助けてくれたのは、なんとローだった。



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