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22


ローはこちらを見て冷たく言う。

「向こうの庭でお前の女が泣いてたぞ」

「!……まさか」

夫の顔が蒼白になる。

「何もしてねェよ……焦る前にちゃんと首輪を付けとけ……それと、お前に俺を責める資格が有るのか考えてからものを言え」

ローのイエローブラウンの瞳が男を射抜く。
彼はゴクッと唾を飲み込んで恐怖に滲む顔をしたまま庭へ走り去った。
それを見送っていると陰が目の前に近付いたのが見えて上を見る。

「目の前で堂々と浮気か?」

口を引き結んで言われた事がそれ。
ローだって令嬢と逢い引きみたいな事をしていた癖によく言えたものだ。

「貴方こそ好き勝手に浮気しているのでは」

「してねェ」

「どうだか」

それにローは結婚した時に宣言した。

「浮気しても構わないと言ったのは貴方ではなくて?」

「……チッ」

絶対に反論出来ない事を述べて相手が舌打ちしたのを聞くとフン、と勝利に息を荒くした。
海賊、七武海、そんな称号を持つ男に言われるままになんてさせない。
そう息巻いているとカツン、と音がして視界が相手の瞳を写す。

(ちか)

「……!」

相手の距離の近さに違和感を覚えた途端、唇が相手と合わさる。
頭に手を当てられて髪の中へ指先が差し込まれた。
角度を変えて何度も摩擦が唇を熱くする。
声を出す間もなく繰り返されるそれに離れる度に息がかかって文句を言う前に塞がれた。
いつの間にか身体が浮いて爪先で立っている格好に腰を抱き寄せられているからだと経緯を知る。

「余所見するな」

息も絶え絶えになっているのに、ローはとても普通だった。
僅かに胸が上下しているくらいか。

「も、や……!」

苦しくて離れようもしても腰を離さないせいで動く事も出来ない。
ローは苦しがっている事を知ったからか部屋の扉を器用に片手で開けた。

(これはヤバい)

この流れはベッド行きだ。
それだけは阻止しなければ。
首筋にキツく吸い付かれながら霞む思考。



翌朝、全く眠れなかったので目がシバシバするのを感じて横に居るローを見た。
結論から言わせてもらうと純潔は守った。
方法は、あれだ、兎に角相手のお腹を殴った、殴って萎えさせた。
寝る前に額が青筋で浮き上がっているローを見たからか夢に出てきて眠れなかったのだ。
隣にローの姿は無い。
安堵しつつ朝には帰る予定となっているので身支度を始めた。



***



LAW-side


お茶会も終わり部屋に戻ると面白いくらい反応が返ってきた。

「何故上手く言葉を返してくれなかったのですか?夜の食事の時もそうでしたわ」

「だが、周りには影響はあるだろ」

「私だけ一人でペラペラと話していたようなものでしたわ。とても虚しかったのですが?」

少し怒ったように目を吊り上げる女に内心笑みが出そうだと思った。
こんなに子供のように怒る等、想像する事も出来ないようなプライドの高い女だったのに。
そもそも、一泡吹かせてやろうと企んで、それさえもまさか協力してくるとは思わなかったので密かに驚いたのだ。
期待していなかったのに期待を裏切る形で話しを振って仲良しアピールをしてくるとは、と食事会の時に思った。
必死に話を繋げようとする態度と様子に楽しんでいた事を認める。
そして、それを見ていて独り占め出来ない事を残念に思った。
こうして、共に寝床を共にしているが一度も相手を抱いた事はない。
だから、厭らしい雰囲気もないがそれなりに楽しいのは事実。
こんなにも女と居て、ただ話しているだけなのに全く苦ではない。

「そう言うな……くく」

取り敢えず宥めておこうと取りなすがつい笑ってしまう。

「まあ!……もう、分かりましたわ!反省するまで貴方とは口をききません。私は休憩に入ります。邪魔しよう等と思わないように。旦那様はシャワーを浴びてきて下さい。嗚呼、案ずらなくとも貴方の裸を覗く事など絶対にしませんわ」

最後に嫌味というよりバカにした言葉で締め括る女を見送る。

「覗くか……フフフ」

なんて拙い反抗なのだろう。
思わず声を出して笑ってしまう。
彼女に聞こえたならまた怒らせてしまうだろうと、気持ちを一度リセットしようとコーヒーを入れる。
それから脱衣場に向かう。
先に入って部屋へ戻るとまだプリプリしている状態のリーシャが居た。
彼女が浴室へ入るのを見るとテラスへ向かい、またコーヒーを飲んだ。
それから数分して彼女がシャワーから上がったのはとっくに知っていたがテラスから見てくる視線にゆるりと振り向いて、さも今気付いたように装う。
リーシャはローにシャワーを使った事を伝えてくると直ぐに寝室へ向かった。
怒っていた事など頭から既に無くなっているのだろうと直ぐに悟る。
ローも寝室のある方向へ行く。
機嫌の直った妻の居るベッドにこっそり忍び込んだ。

「………………旦那様、ベッドはもっと広いですわよ」

直ぐに思っていた反応が返ってくる。

「今日は寒ィ」

本当は寒く何てない。
普通だ。
それを彼女も気付いているのだろう、解せないという声音で「ではもっと掛け布団を持ってきましょうか」と述べる。

「必要ねェな……これで良い」

そう理由を付けて彼女の柔らかい体に腕を通して体を寄せた。
脈を測らずとも早いのが分かる。
ローも共鳴するが如く心臓の脈動を感じた。
そのまま様々な感情に浸りながらリーシャの寝息と寝顔を見ているとこちらも眠くなってくる。
それから微かな音で目を覚ます。
海賊という職業上、そんな些細な音でも起きてしまう。
否、起きなければ死活問題だ。
その物音は一度や二度ではなかった。
なんだ、と思いながら彼女を起こさないように起きあがると足音を消して夜の部屋を移動する。
扉を開けると傍にメロディー・キャロルが居た。
いつかは近付いてくる事は分かっていたので、薄く口元が上がっていくのを感じる。
明日の朝には帰るので今日のうちに何か仕掛けてくる事を予期していたのだ。

「トラファルガー様、少し宜しい?」

相手の女の愚かさと迂闊さに頷いた。



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