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LAW-side


廊下に呼び出されたロー。
開口一番にキャロルはとても憐れみを含んだ言葉を投げ掛けてきた。

「貴方様のお噂は私の耳にも届いております。貴方は捕らわれのお人……貴方を救ってさしあげたく思います」

笑える、と笑みを浮かべる。
何から救おうと言うのだ。
別に捕らわれた覚えはない。

「だからトラファルガー様……私を……愛人にして下さいませ」

「必要ない」

そんな言葉しか出てこないのかとこの女のボブギャラリーの低さにがっかりした。
呼び出したのだからもう少しマシな会話をして欲しいものだ

「いいえ、そんな事はありませんわ。だって貴方はあの女に騙されているのです。その姿はまやかしなんですもの」

微かな音と気配を後ろに感じた。

「私……貴方が七武海として、自由で居る姿を見たいだけなのですわ」

良くある、男なら言われてみたい台詞や甘い言葉を散りばめてくる。
ただの男ならコロッと落ちるかもしれないが生憎ローは海賊だ。
そんな陳腐な文句で落ちているのなら笑い話しである。
何故この女はそんな言葉で自分が靡(なび)くとでも思ったのか、頭の中を執刀してみたい。
それよりも、視線の元がリーシャだと確信したので場所を移した方が色々と都合が良い。
ここでこの令嬢を逃せばまたちょっかいをかけてくるかもしれないと分かっていたので庭に行こうと笑う。
相手に皮肉の笑みを向けたというのに女はそんな意味の視線すら気付かずに嬉しそうに行きましょうとつられる。
馬鹿な女だと尽(ことごと)く思った。



庭に移動すると胸に身を寄せてくるキャロルに今直ぐ引き離したい衝動に駆られた。

「トラファルガー様。私を愛人にして下さいませ。その方が貴方の為なのです」

(自分の為の間違いだろ)

クッと聞こえないように笑う。
ローも権力を得る為だけに結婚したから権力がどれ程重要かは熟知している。
だが、こんな貴族の権力上昇に協力してやる程の魅力はメロディー家にない。
もし、リーシャの家の権力よりも上だったのなら利用仕返す事も考えた。

「俺には妻が居るんだぞ」

「貴女はあの女に無理矢理結婚させられましたのよね」

夫の居る身で無理矢理等とはかなりの無茶な台詞だろう。
おまけに婿養子だから結婚させられた気持ちがこの女に理解出来るとは思えなかった。

「可哀想な人、私なら貴方をあの女から守れますわ。あの女性は悪魔なのです。噂でも彼女は様々な事をやってきましたわ。その行いのはしたなさと言ったら……」

ローは愛人にしろと言って己の事を棚に上げるキャロルの言葉を遮る。

「黙れ」

リーシャの何を知っているのだ、と睨む。
この女は噂のローを手に入れたいが為だけに彼女の事を口にしているのだ。
もう脅す事が一番だろうと判断する。
愛刀の鬼哭を能力で出して抜き身を女の首に近付けた。

「金輪際俺達に近付くな。少しでも陰がチラツいたら徹底的に潰す。俺はそれを出来る力を持っている」

それだけで呆気なく顔を青白くして震え出す身体。

「その事を忘れるな」

刀を鞘に収めると泣き崩れる女が視界の端に見えたが気にする価値もない。
話す時間を無駄にした徒労感が漂い、さっさと寝てしまおうと宛てがわれた部屋の近くに行くとメロディー・キャロルの夫とリーシャが何かを話していた。
しかも男の方は目に期待を秘めて相手を見ていたので内心沸々と知らぬ感情が胸から溢れてくる。
自分には妻が居る癖に他に手を出すなど身の程知らずか。
ローが折角目を付けた女に対して他の男が目を付け掛けているというのは解せない。
そして、許せない。
男が彼女に何かを言い掛けて本能的に言葉を遮る。
彼女は男の言い掛けた言葉の最後が分かっただろうか。
分かったとしても手放さない。
その男には惜しい女である。
高望みし過ぎる男にお前の妻が泣いていると言えば変な方向に想像して顔を青くするつまらない反応。
そんなに嫌なら首輪を付けてちゃんと見張っていれば良いものを。
心の中で呆れ果てながら男を見ていると奴は庭へ去っていく。
そんなに心配なら余所見などするな。
ローはリーシャに向き直ると彼女ヘと皮肉を歌う。

「目の前で堂々と浮気か?」

なんて言ったら彼女は何と返してくるのだろう。
リーシャは考え方が聡明で頭が良く回るらしい。
それで時々ロー自身を翻弄(ほんろう)する。

「貴方こそ好き勝手に浮気しているのでは」

結婚するのも億劫なのに浮気をしている暇など無い。

「してねェ」

「どうだか」

返してきた言葉に心底イラつきながら彼女を見ていると、とても言い返せない事を言ってくる。

「浮気しても構わないと言ったのは貴方ではなくて?」

「……チッ」

確かにローは結婚をした日に言った。
言った事は無くならない。
どうすれば言葉の意味が緩くなるのか考えた。
今は夜で相手は寝間着(ねまき)だ。
その気にさせれば乗せられてくれるだろうか。
乱れる彼女を想像して高揚感を感じた。
近付いて上を向かせると瞠目するのが見えて口元を上げる。
驚くのはまだ早いとばかりに何かを言われる前に相手の赤く熟した色の唇を塞いだ。
色んな事が頭に渦巻いて思考が乱れている様子のリーシャがこちらだけに集中しないのが釈然としない。

「余所見するな」

相手の抗議の意志が宿る瞳を無視してその唇を堪能した。
彼女に今まで何度も翻弄させられてきたから意趣返しとでも言おうか。
何度も何度も合わせては足りないと感じる。
首元に噛みつく頃にはいけそうな気がしたのでそのままベッドに運ぶ。
捕食しようと腰に手を這わせた所で彼女の珍妙な動きに目を丸くする事になる。
最初は抗っているのだと思って小さな抵抗を無視していたのだが、その動きが的確に阻止しようと動いているのを知った。
ローの腹にグーパンをしてきたり髪の毛を躊躇なく引っ張ったりと微かに痛い地味な攻撃をしてきたのだ。
数分で体力切れになるだろうと思って気にも止めなかったのだが、それから二時間と経っても攻撃は無くならない。

「……そんなに嫌か」

「私達は政略的に結婚しましたわっ。ですので私は貴方の妻としてこれまでやってきました。貴方は結婚した日に干渉してくるなと言いましたわよね?でしたら改めて私から言わせていただきます」 

あれ程絶え間なく攻撃してきたのに良く話せるものだと関心する。

「私に一切個人的に干渉をしてこないで下さい」

リーシャは真面目にそう宣言した。



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