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- ナノ -
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夜が明けてから出発してお昼前にメロディー家に着いた。
どうやら自分達の他に五組の夫妻、又は夫婦も招かれているらしい。
顔を合わせるのはお昼の食事とティータイムの時だろう。
因みに主催者のメロディー家の奥方はキャロルという女性だ。
女性というか、少女という年齢。
だから欲しい物は手に入れられると思っている。
かく言う自分も嘗(かつ)てそうだった。
気持ちは分かりたくないが分かるのが悲しい。
この世は私が中心よ、の心だ。
メロディー・キャロルの夫は妻の方が権力が強いので逆らえないカカア天下。

(色々と強い私の夫とは正反対)

私の、と言うにはお互いの心が通っていないが。
嘲とい気持ちになって、気持ちを切り替えようと首を振る。
今は夫婦一組の一部屋に宛てがわれたソファに座っていた。

「あら、お帰りなさいませ」

「嗚呼」

何処か散歩へ行っていたらしく、フラッと出て行ってフラッと帰ってきた。
お茶を飲みながらのんびりと言う。
彼はソファに座るとこちらを見て何か飲みたい、と言うのでリーシャはソファから立ち上がってティーポットのあるローラー付きの机みたいな上の前に立つ。
名前はど忘れしたので割愛だ。
ティーポットを手に取ってもしかして、飲むかもしれないと思ってメイドに頼んでおいたコーヒーを注ぐ。
豆は良いのを使っているらしく、良い香りが鼻を擽(くすぐ)る。

「どうぞ」

「コーヒーか」

そう述べるとローはそれに口を付ける。
一応妻の役目としてローの好きなコーヒーが上手く入れられるように練習をしていたのだが、こんな所で役立つとは。

「お菓子も貰いましたの。どうですか」

聞くと貰う、と言うのでソファの前に持って行く。
持ってきておいた本を閉じてリーシャもミルクティーを飲む。
美味しい、やはり少し家のと違うのも良い。
場所で味が違うのが通という感じだ。
ほんのりとした空気が漂う部屋にメイドがやってきてお昼の用意が出来たのでお集まり下さい、と言いに来た。
ついに来たか、と息を整える。

「楽しみだな」

含み笑いをするローの顔は悪い。
悪役の顔だ。
楽しみなんて、まるで何かが起こるとでも言いたそうである。
実際メロディー家の我が儘さんがローの権力を欲しがっているし、呼んだのはメロディーの家の者なのだから、起きないと言える保証は無かった。
帰りたい、今すぐ回れ右をして帰りたい。
食事の席に現れると既に三組の夫婦が居た。
メロディー夫妻も座っていて談笑している。
こちらの姿が見えると一時静かになる。

「ようこそ、我がメロディーの領土へ」

凡(およ)そ完璧ではない笑顔で言うメロディー・キャロルの目は正確にローを捕らえていて、どう見ても肉食獣の瞳をしている。
横のローを見てみると無表情だった。
楽しみだったんじゃないのか、と思いながらお招き云々と返す。
それから隣同士にある席に座ると再び談笑が、始まらない!
きっと七武海のローのオーラと無法者という情報が頭にあって上手く空気が緩まないのだと思う。
なんと不器用な者達だろうか。
内心笑いながら無表情でローに話題を振る。
部屋の中は静かなので良く聞こえるだろう。

「旦那様、これはお魚ですわね」

「嗚呼」

(…………お馬鹿!話題を振ったのに即終了にさせる奴がいるかあ!)

嗚呼、の一言で終わらせるつもりのなかった会話に慌てて別の話題を作る。

「これは上等なワインですわね、ねえ旦那様」

「そうだな」

「まあ、旦那様もワインがお好きなのですね」

「普通だ」

「そうですの。私の父もワインを嗜むので家にワインセラーもありますのよ」

辛い、会話を無理矢理繋げるのが辛過ぎる。
しかもローの言葉が短くて話題の片鱗を探す事も出来ない。

「それは知らなかったな……お前も酒を飲む方だったのか」

今、言うべき事は違うと思う。
そして、リーシャだって大人なのだからお酒くらい飲める。
顔をローの方へ向けて相手の本気度を確かめた。
どうしてこうちゃんと会話をしようとしないのだと目で訴える。
見ている筈なのに涼しげな顔をして何食わぬ顔でワインを飲むローに額がピクッとなった。
出来るだけ平常心でいようとすればローの態度に眉を潜めてしまう。
周りの人達全員あんたのせいで緊張さてるんだよ、と言いたい。
海賊だとか七武海だとか、貴族には免疫等ないだろう。
今もローの一挙一同を見つめている幾つもの目。
だから此処のパーティーには行きたくないと思ったのだ。
こうなるかもしれないと予想して反対したのにローが行くと言って聞かないから。
恨めしくなって料理を食べる手を早める。

「このオードブルも美味しいですわね」

「ありがとうございます。トラファルガー夫人」

ローへ言ったのにメロディー・キャロルが答えた。
キャロルは臆する事なくこちらを見ている。
ローが怖くないのだろうか、と思う。
権力が貰えるならば何者も厭わないのだろうか。
ローにも彼女は目をやって「気に入って下さると嬉しいです」と言う。
何とまあ分かりやすい態度だろうと内心呆れる。
隠すくらいしろよ、と思わなくもない。
隣に居るキャロルの夫は妻の言う事に何の関心も抱いていないように思える。
女性の方が家の権力も夫婦関係も上だという情報は当たっているようだ。
それにしても、トラファルガー夫人と呼ばれると違和感をバリバリに感じる。
恥ずかしいとかではなく何か違うな、という違和感。
まあ、それは置いておこう。
それからの食事は何となくポツリポツリと話の声が聞こえて残りの夫婦が揃うと静かさは無くなった。
その状態になって良かったと安堵する。
次の顔合わせはお茶会だ。
こんな調子で終わるならば自分の屋敷でのんびりとしている方が有意義だろう。
鬱蒼となる気分に宛てがわれた部屋で寝転ぶ。
ローも部屋にあるソファで寛いでコーヒーを飲んでいる。
この人は全く何もしていない。
一体何をしに来たのか思い出して欲しいと思いながら見ていると相手も気付いて見てきた。

「思い知らせるのではなかったのですか」

「お前の慌てる顔が面白くて忘れていた」

(うわうわうわ!悪趣味!)

慌てている顔を見て楽しんでいたと言うのだ、この男は。
ムッとなりもう話し掛けてやるものか、と決めてローが見えない様に顔を移動させた。
お茶会は三時からなのでそれまで少し仮眠しておこう。

「おい」

声が聞こえたがどうでもいい。



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