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19


それから夜になり予約していた宿屋へと辿り着く。
夜盗に襲われなくて良かった。
襲われたらか弱いリーシャはあっという間にお陀仏だ。
まな板に乗る動けない魚だ。
儚い事を想像しているとローが声をかけてくる。
一応部屋が同室なのは伝えてあるので抜かりない。
彼の方へ足を動かして後を追う。
今は亭主関白を推薦しているバージョンだ。
なので素直に従う。
此処で何かを言っても二人で泊まる事は無くならないのだ。
悲しきかな、現実よ。

「此処か……そこそこ広いみてェだな」

言い忘れていたが、今回は使用人を連れていない。
たった四人しかいないので連れて行くと寂しい事になる。
それと、自分で出来るので誰かを連れて行く必要等感じない。
メロディー家にはメイドも執事も居るだろし、構わないなと思った。
ローも何も言わない。
そもそも、どうでもいいのだと思う。

「シャワーはどうする」

「ではお先に入らせてもらっても?」

「一人で入れんのか?」

(……これって、メイド無しで入れないと思われてる?)

ローの貴族の女のイメージはそうなのか。
しかし、実際記憶が戻るまでは一人ではなく沢山居たメイドに毎日恥ずかしげもなく洗われていたので正解ではある。
入れます、とちゃんと言うとローはそうか、と述べて刀を近く置いた。
それからシャワーを浴びて上がる。
さっぱりした、と色気のないパジャマを着てから部屋へ戻った。

「お次、どうぞ」

そう伝えるとローはリーシャを上から下まで見てから立ち上がった。
こうなる事を予期して色気のないものを選んだ。
ふふふ、と内心笑って庶民の知恵舐めんなよ、と勝利に浸る。
まだ眠くなかったのでソファに座って持ってきていたトランプで一人神経衰弱をした。
こういう旅行となるとついつい持ってきてしまう物だ。
でも、やはり一人では味気ない。
神経衰弱三回目の途中でつまらなくなってきた時、ガラ……と浴室の扉が開く。

(…………夢小説にもこんな展開あったなー)

上を向くと半裸のローが居た。
ズボンを履いただけの状態を見てからあー、となる。
まさか見る事になるとは思わなかった。
屋敷でも半裸で出歩く事もなかったので見ることはなかった。
遠い目をしているとその視線に気が付いたローが何を勘違いしているのか口元を弓なりに上げる。

「誰かの半裸を見るのは初めてか?」

「……そんな訳ありませんわ」

そのしたり顔がムカッときてつい見栄を張る。
男を知らないと言うのは憚れて、嘘を付いてしまう。
しかし、前世ではあるので強ち嘘ではないかもしれない。
今世ではカウントにならないかもしれないが。
胡乱に思い出していると部屋の空気がヒヤッとなった気がした。
周りを見回しても窓を見ても開いていなかったので、今度は寒くなっただけかと布団を被ろうとベッドの方へ行こうとするとローが呼び止める。
どうしたのかと立ち止まりローの方を見上げると彼はもう一つの向かい側にあるソファへ座りトランプを見てやるぞ、と言う。

「へ?」

反射的に口から出てしまうのは仕方ないと言おうか。
ローがトランプを自発的にやると言うなんて誰が予想出来ただろうか、とヒクつく頬に笑みを浮かべる。
彼はトランプを切り始めるので渋々座り直す。

「俺が勝ったら、お前が知る男って奴を教えろ」

「え″」

濁った声を出すのは当然。
そんな男などこの世に居ないのだから。
今世には少なくも。

(負けても言える事ない)

冷や汗が出る。
それを知りたがるローも可笑しい。

「私がそんな事を言う義理等ありまして?嫌ですわ」

いつもの態度でスンと横を向くとローは喉で笑って、そう言うな、と述べる。
他の人の目を見たことがないが、もしかして彼の目は瞳孔が開いているのではないのか。
うむ、分からない。
けれど、目を見ているだけで何故か背筋がゾクッとする。
何かのスイッチでも押してしまったのかと考えるが、覚えのない。
あれやこれやと考えている間にローがカードを配り始める。
夢小説では大体ゲームや賭事に強いという可能性が高く、こちらが負ける可能性が高い。
このままでは勝てない。
ポーカーフェイスを駆使するしか……。

「嫌ですわ、拒否しますわ」

「……何か望みはあるか」

断ったら次は聞いてきた。

「何ですの?望みなんてありませんわ」

「ない?そりゃありえねェ。お前が欲しい物がないわけ」

「無い物は無いです……」

ローの言葉を遮りながら言う。

「次出かける時に何か買ってきてやる」

ローは思案顔でそう言うとリーシャは笑う。

「そうですわね、強いて言うなら……本が欲しいです……冒険物の」

「冒険……?……分かった」

賭けすら関係なくなっている事を彼は気付いているだろうか。

「まぁ良いですわ、始めましょう」

「嫌何じゃねェのか?」

嫌だったが、一人で神経衰弱をするのも飽きたので二人でするのも悪くないと思ったのだ。
ただそれだけだ。

「折角なので楽しむ事にします」

笑って答えた。



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