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さて、此処で今更なのだが、ローの好感度を下落させようと思う。
もう結構ポイントが溜まってきたので減らさなければ。
正直に言おう、べらぼうに焦っている。
かなり好感度が高まってしまって焦りに焦っている。
いっそフラグっぽい浮気の一つや二つくらいをしようと考えなかったわけではないが、メロディー家の一件でそれをするとタダでは済まない気がした。
生きて帰れない的な悪寒。
正しく死にフラグである。
という訳もあって、死にフラグではない比較的生還率の高い方法をしてみる事にした。
という、諸々の事情によりパン計画を立てた訳だ。
もうローは席に着いているので後はこれを出すだけだ。
ほくそ笑んで誤魔化しつつ出すとローは期待通りの反応を示してくれた。
「旦那様。私が丹精込めて作ったものですわ」
「こんなに沢山……?」
好感度が高いので食べてくれる事を期待して相手がパンを摘まむのを待つ。
「俺はパンは嫌いだ」
「え!?そ、そんなっ」
と悲しそうに演技、ここポイント。
そうすれば、ほら。
困った顔をして眉間に皺を寄せるロー。
内心ほくそ笑んで外面は悲しげにをモットーに。
しかし、この反応では食べないし、好感度も下がらないかもしれない。
「そうだわ!私が旦那様に食べさせてさしあげます」
名案だと手放しで提案するとローは更に顔の表情筋を使う。
険しくなった。
怖くない、そんな顔をしたって。
何せ嫌われるのが目標なのだから。
笑みを浮かべてローの止めろ、という視線をスルー。
椅子に座ってサンドイッチを手で摘まむとリーシャは彼の口へ持って行く。
大丈夫、美味しいから、と告げてまた笑う。
「七武海ともあろう方が……まさかこれを食べれないとでも……?」
嫌な女を演じる事にした、これなら嫌われるかもしれない。
「だから俺はパンが嫌いだと言った筈だ」
「すみません、お耳が休業中なのでよく聞こえませんわ」
わざとそう言って嫌な態度を取る。
あくまでも表面は笑顔を節度に頑張った。
ローは口角をへの字にしてギラッと睨んでくる。
しかし、そんな事を怖がっていても何ら目的を遂行出来ない。
しっかりとした意志で挑んでいるので逃げ腰に等にはならないリーシャ。
それを凄いという目で見ている使用人達の視線を一心に背負い、果敢にローへとパンを進める。
ローは何でこんな事をする、と聞いてくるが、理由なんて色々有りすぎて言えない。
例えば離婚して欲しいからだとか、嫌われたいだとか。
どれも言ったら叶えてくれるだろうか。
いや、ローは微かにリーシャという存在を認識しているから言わないし、叶えないだろう。
それらを口に出すのは賭事に近い。
「ほら、早くお食べになって?」
ローの質問には答えず微笑みでグイグイ押す。
しかし、ローは嫌な顔をしてパンを押し返した。
パンをリーシャの手から取り上げたので「あ」と行方を追う。
パンの入っている籠に戻したのでまた取ろうとするとその腕を掴まれる。
口を開く前に椅子から強制的に立ち上がらされ、引かれた。
遂に嫌われたのか、と期待に瞳を輝かせる。
どこへ連れていかれるのだろう。
ローの自室として宛てがわれた部屋に付くと部屋へ入れられて問われた。
「さっきのあれは何だ」
腕を掴まれたまま問われて考えていた答えを提示。
「旦那様の為にと作ったパンですけれど」
シレッと言うとローは声を出さずにリーシャの顔を見つめる。
一応目を合わせてみると探っているらしく目を細めていた。
真意を覗こうとしているみたいだ。
生憎、それを見破られるようなヤワさは持ち合わせていない。
ニコリと笑って誤魔化すとローは溜め息を一つ吐いた。
「もういい」
「では部屋を出てもよろしくて?」
ローはそれに待てと言う。
まだ他に何かあるのだろうかと彼を見ると一瞬で目の前に距離を縮められる。
驚いて下がろうとすると彼の腕が腰に回されて身動きが出来なくなった。
離して、と言っても聞く耳を持たない。
恐々と上を見上げるとやはり口元を上げたローが居たので嫌われたのは錯覚だったのかとうなだれる。
「朝の挨拶がまだだっただろ」
いつ、そんなものをするように言ったのか、と思案していると朝の挨拶なのであろうキスを受けた。
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