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18


メロディー家というそこそこ地位が大きい貴族から手紙が届いた。
中を開封して見ていると内容はパーティーを開くのでトラファルガー夫妻にも出席して欲しいというもの。
メロディー家の返事を出す前にとある人間を雇い情報を集めさせた。
どうやらメロディー家は婿養子らしく当主は小さな頃から令嬢特有の傲慢で欲しい物はお金で買うような貴族だという。
そして、今彼女の欲しいものの一位は彼の男、トラファルガー・ローである事も知る。
その事実に手紙の招待状を照らし合わせると焦(きな)臭さが漂う。
胡散臭いし、どうにも何かありそうだ。
行ったら一騒動起きそうな予感にこれは出席しない事に決めてローにもそれを朝の朝食に伝えた。
昨日帰ってきたばかりなので丁度タイミングが良かったと笑う。
笑ったのは面倒な手紙をわざわざロー宛に書く必要がなくなったからである。
それと、探偵(極秘)から追加の情報があった。
トラファルガー・ロー本人を欲しがっているのは七武海の権力を欲しているからという権力絡みの面倒な事。
それも含めてローに伝えると彼はニヤリと笑みを浮かべる。
その顔は危険だ、と嫌な予感に頬がひくりとなり、行きませんわよね、と言う。

「面白そうじゃねェか……俺の事を舐めにかかってる女に思い知らせておいて損はねェ」

「私は嫌ですわ。何が起こるのか分からない向こうのテリトリーに入るなどというのは」

「クク……そう早く切り捨てるモンでもないだろ。それにお前の実家に取っても悪い話しじゃない」

「家はどうでも良いのです」

「…………じゃァ、お前にとっても良い話になる」

「今思い付いた言い方等止めて下さいませ」

「別に取って付けた訳じゃねェ」

彼はこちらを見てからそう述べる。
どうだか、と内心疑う。
自分の実家など遠の昔にどうでも良いレベルで見放している。
昔と言うのは大体前世の記憶が戻った時の事だ。
今世の自身は実家を恨みながらも義務だと言い聞かせていた節があるが、もう違う。
言いなりになんてさせないし、従う気も皆無だ。

「家はどうでも……な」

「何か言いまして?」

何かを呟いた声に聞き返すとローは笑って別に、と返してきた。
少し気味が悪く感じ………ゲフン。

「はァ……ではパーティーに出席すると手紙を出しておきますわ」

どう足掻いてもリーシャの意見など聞きはしないだろうと海賊のローに完敗を示す。
たまには他の貴族の生活を見てみるのも勉強になるだろうと言い聞かして、パーティーの場所を確かめながら馬車も荷物も用意せねばと朝食を味わいながらグルグルと思考を回した。






二週間後、ローが不在だったり、不在ではなかったりを繰り返しながら迎えたパーティーがある場所へ向かう当日。
メロディー家もメイス家の土地も広く、一日掛けても着かない。
住んでいる屋敷はメイス家の土地に建てられているのでそこそこ距離が空いている。
此処から二日掛けて行かねばメロディー領へ着かない。
トラファルガー・ローへ嫁いだのにメイス家の土地へ居るというチグハグさなのは、彼が海賊という異質な存在で七武海という地位だからこそなせる事。
リーシャも結構楽なので文句はない。

「外泊……」

ローが目を閉じている時を見計らって呟く。
ローとは今馬車の中で二人きりだ。
荷物も馬車の後ろへ積んでいるので音は馬の蹄(ひづめ)くらいか。
何故こんなにも混乱というか、困っているというと、メロディー家へ着く前に一泊外の宿へ泊まらなければいけない事が理由。
つまり、一部屋に二人で泊まらなければいけないのだ。
ほんの稀にローと二人でベッドを使っている時が我知らぬ間にあるが、それはそれで何もないからというもの。
場所が違えば嫌という程意識してしまうのは仕方がない。
出来るなら敷居を立てさせて欲しいと祈る。

(というか、よく寝てられる……)

海賊は寝ない時もあるのではないか、と想像する。
不寝番、というんじゃなかったか。
見張りが寝ない事は普通だし、賞金首だったローも早々に寝る事は出来ないだろう。
暇だから想像していられるリーシャはローの寝顔を見ながら思った。
帽子を被っていてあまり見えないが。
よく見てみようと顔を下に下げて目を動かす。

「…………ぐー」

「!」

鼾(いびき)をかいている事に驚く。
そっと周りを見て幻想でない事を確認する。
本当に鼾をかいていた。
この耳で今聞いた事が信じられない。
油断しているのか、どうなのか、と考えつつ前は鼾なんてかいていなかった事を思い出す。
少しは信用してくれている、と思ってしまうではないか。
いやいや、信用しないと決めたのは自分で、ローがこっちを信用しようがしまいが関係ない。

(好感度、微量ずつ上がってるのかな、やっぱり……)

困る、それは困る。

(嫌だな、離婚してもらうには……嫌われないと……えっと)

ローに嫌われる為には、彼の嫌いな食べ物を作ればいいのか。
夢小説のマンガの知識を生かしてどうにか考える。
確か、彼の嫌いなものは、と思い出す。

(パン……これは意外っていうか、聞いた事ないから印象強かった……梅干し、だっけ?)

好きな物は焼き魚……食べていたのはおにぎりだった筈。
全て思い出すと安堵する。
大丈夫だ、まだ記憶は覚えていた。
時間が経つと覚えていた物が朧気になるのは夢小説の課題的問題の時もあるので何かに綴るのも良いかもしれない。

「さっきから青くなったり、変な顔したり、忙しい奴だな」

「!、何時から起きてましたの?」

驚いたが、顔に出さずに無表情で言い抜く。
よくやった自分。
ローもローでポーカーフェイスが得意だから時々何を考えているのか判断出来ない時がある。

「二分前だ」

(考えている時真っ最中じゃんか)

恥ずかしさと何で見るんだ、という疑問にそうですか、と素っ気なく答える。
今更素っ気なくしても意味はないんじゃ、という言葉は是非言わないでくれ。



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