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LAW side

前の時は二週間と立たずに帰ってきたのだが、今回は海軍からの収集という七面倒臭い物に参加しなければいけなくなったので参加した。
予定よりも長引いた事に苛つきながら屋敷へ帰ると屋敷の中はほぼ無人だったことに更に苛立ちが募る。
メイド服の女にリーシャの居場所を聞くと怯えられながら教えられた。
そんなに怖いのならばここで働かなかったらいいのだと虫の居所が悪い機嫌で女を後にする。
しかし、何故森なんかに居るのだろうと疑問に思う。
探索したくなったのだろうかと理由を並べていると森へ近付く事に銃声よりも軽い音が森から聞こえてきている。
鹿狩りでもやっているのかと思った。
だが、シャチとペンギンの姿を確認した時に、その事は頭から綺麗に忘れる。
何故なら、シャチの背後にリーシャが忍び寄っている、這い寄っているとも言う。
そんな思わず唖然としてしまう光景を前にシャチが彼女の接近に気付いた時にはかなり近くに来ていた。
彼女は気付かれたと知るや迷わずシャチをおもちゃと思わしき銃口を向けて発射する。
どうやらペインティングボールだと周りのカラフルな光景に知った。
あっと言う間にシャチとリーシャの撃ち合いは終わって勝者が立ち上がる。
ペンギンもリーシャの所へやってきて二人で喜び合う。
シャチはガクリと膝を付いて負けに浸っている。

(一体俺の居ない間に何が……)

その気持ちにデジャヴを感じた。
己の妻が別人になった時と同じく似たような心境だ。
シャチとペンギンがそれに付き合っている時点で何となく展開は読める。
しかし、リーシャがシャチの背後に忍び寄って捨て身の特攻をした事が大きくローの全ての根底を覆させていく。
貴族なんじゃないのか?
その服は何なんだ。
何故ゲームにあんな捨て身な技を用いたんだ?
その笑顔は何なのだ、と。
様々な出来事がローの頭を混乱させていく。
冷や汗と言っても過言ではないものが額から出ている事も気にならない程見つめていると、最初に気付いたのは負けた男だった。

「あ、旦那様……帰ってきたんですねー!」

シャチがよく分からないテンションで立ち上がって此方へ来る。
それに続いてペンギンも来るが、リーシャは何かをペンギンに伝えてから屋敷の方へ歩いて行く。

「アイツは何処へ行くんだ」

ペンギンに問う。

「服が汚れているから身を綺麗にしてからお出迎えすると伝える様に言われました」

(……!)

ペンギンやシャチの前ではあんなにボロボロでベタベタで破格な笑顔を見せるのに、ローを前にして二人と真逆な対応に己も気付かない憤りを感じた。

(俺には本当の姿を見せられないのか)

偽りの夫婦、偽りの結婚、偽りの生活。
彼女がそういう態度になる要素がローにはあるという事は良く理解している。
けれども、頭では理解しているが、何故か納得する事が出来なかった。



***



シャチ side

初めてその姿と性格を間近で見た時はギャップにかなり苦しめられた。
屋敷に潜伏する事になったのは、彼のトラファルガー・ローの書類上『嫁』が以前まで沢山いた使用人を一斉に解雇した事が主な理由だ。
ローはとても多忙な身であるが故に船長の船員であるシャチとペンギンに内情を探る密偵として白羽の矢が立つ。
特にすることもなく、刺激的な事も起こらないところで身体を鈍らせるよりはずっとマシだから参加する事にした。
面接をするという訳で先ずは偽名を考えなくてはいけないと思って、ペンギンとカッコイい名前を考える。
密偵と言えばやはり偽名は必需品。
それを得てからいざ面接へ。
何というか、キャプテンからは「我が儘な女で煩い」と聞いていたので拍子抜けした。
即採用なのも驚いた。
ペンギンもだ。
お互いに大きく頷いたのもローに報告出来るからだ。

「つーか、マジキャプテンが言ってたイメージと……」

「正反対だな、今の所」

対面した時も改めて思ったし、ペンギンも混乱したように腕を組む。
こうして二人揃って潜入する事に成功した。
キャプテンは喜んでくれるだろう。
しかし、その日だけの驚きでは済まなかった。
庭師になるように言われたので外に居る事が多くなる。
そして、何日も経過した後でも特に身構えていたような事態は起こらなかった。
例えばローが言っていたような我が儘も癇癪もなく、寧ろかなり自由に屋敷を歩いていても咎められる事もない。
数日してからやっとローが屋敷に帰ってきた。
既に使用人として雇われている事は伝えてある。
外に居てると奥様がラフな格好で出てきた。
とても貴族が着る様な服ではない。
驚いていれば外へ出ようとする。
一人もメイドを連れていないし、川へ洗濯へ……なんて出てくる言葉に思わずツッコむ。
押し問答を繰り返しているとローが後ろに居てリーシャ達にどうしたと聞いてくるので訳を述べる。
全てを理解したらしいローは付いて行くと言うので見送った。
だが、帰ってきたローはぐったりしていたので何があったのだろう、と目を白黒させる。
その間に彼女は袋から箱を取り出す。
そして、シャチに四つん這いになるように指示をするのでその通りにした。
そうしていると意気消沈しているローにピンヒールを履かせ出すので嫌な予感を覚える。
本能が逃げろと言う。
ローに履かせ終えたリーシャはその大きな足をシャチの背中に勢い良く乗せた。
ピンヒールの尖った部分がめり込んで痛い。
痛いという悲鳴を上げていると意識を戻したローが何をやっているんだと言ってきたので救世主等何処にも居なかった。
それから数日後、ローとリーシャは夜会のパーティーへ行く為にダンスをしているのを眺める。
貴族の令嬢と結婚したからってこんな面倒な事をしなければいけないなんてローがとても不憫に思えた。
でも、彼は嫌な顔せずに綺麗に踊っているし、踊りのことは全く分からないが完璧に見える。
この調子なら貴族の鼻を明かしてやれる、と一人で盛り上がった。
けれど、パーティーから帰ってきた二人、詳しくはリーシャの様子が変だった事が気になる。
翌日、彼女から手伝うように言われた作業をこなして朝から働くと箱から出てきたのはなんと様々な形をした棺桶だった。
ペンギンも仰天していて互いに顔を見合わした。
けれども、そんな事はお構いなしで何処か怒ったオーラを纏う奥様はローを呼びに言ったのだが、まだ朝食も用意出来ていない。
ローが此方へやってきた時、良い笑顔の女と顔を引き吊らせた男の二人が棺桶の目の前に立つ図が朝から出来る。
これにはペンギンと苦笑いせざるおえなかい。
一体に二人の間に何があったんだろう。
そして、衝撃的な事にキャプテンが女物の下着を付けているという疑惑が浮上した。
キャプテンは否定していたからないと信じたい。
それにしても奥様はとても怖いもの知らずな性格をしている。
前からそうだったのだろうか。
それにしてはローの態度に違和感を覚える。
彼は彼女を嫌っているようにも鬱陶しく思っているような素振り等していない。
それについてはペンギンも同じ意見だった。
またまた数日後、リーシャが実家に帰る事になった。
何でも父親から手紙を渡されて帰ってくるようにと一時的な帰還らしい。
奥様が留守なんて暇になる。
貴族の家で護衛と監視なんてつまらないと思っていた当初に比べたら予想よりも楽しく過ごせた。
堅苦しい生活になると踏んでいたのにかなり自由に過ごせた事は幸運だ。
当日の朝になって突然ローも着いていくと言われて、驚く。
確か彼女の父親は海軍で貴族だという男だ。 
一番会いたくない部類だろう人間に会いに行こうとするなんてローの考えは今のところ不明。
それよりも一人で行くつもりだった彼女の反応が知りたい所だ。
二人が居ない間に変化等は特になかった。
夫婦の二人が帰ってきたので出迎える。
何処か雰囲気が緩んだような緩んでいないような気がするが、笑顔で対応。
すると、リーシャがとあるお土産をくれた。
それに、この屋敷に仕えていて良かったと思った事を記そう。
ペンギンと交換しあった所謂男達のロマンの詰まった本は女性が買ったからかセンスが良かった。
奥様、あんた最高だぜ。



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