×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
14


父親に報告にもならない報告をした後、直ぐに家路への帰路を進めた。
再び馬車へと乗るとローは寝息を立てて寝始める。
実家ではどうやら熟睡出来なかったようだ。
当然と言ったら当然だろう。
カタカタと馬車の車輪が回る音と馬の蹄の音が心地よく耳に届き、いつの間にかリーシャも眠ってしまっていた。
起きたらローの腕に体重を掛けて枕にしてしまっていたので慌てて起きる。

「すみませんっ」

「この程度で怒らねェよ」

「……そうですか」

確かにルフィの破天荒な行動にも怒りながらも行動していた事を思えば納得だ。
それからポツリポツリと途切れながら時間が過ぎていき、漸く家に着いた。
出迎えたシャチとペンギンとメイド達にお土産を渡す。

「お帰りなさいませ!」

「ああ」

シャチが嬉しそうに言うのを見ながらお土産を差し出す。

「はい、シャンデ」

「ん?……ここここれっっ!?」

「はい、ペ、ペンダ……これ」

ダメだ、偽名が長すぎて言えない。
誤魔化す様にペンギンへ渡す。
震えるシャチを不思議そうに見ながら受け取ると彼も肩を震わせた。

「どうした」

ローが二人の様子に歩み寄ってくる。

「な、何にもありません!」

「え、ええ!何も!何もありませんからっ!!」

「?、そうは見えねェが……」

「旦那様、無粋な事は主人として知らぬフリをするのが優しさですわ」

クスリと笑って言い添えると同調して首を縦に動かす部下二人。
禁忌に触れてはいけない。

(喜んでもらえた様で何より。ここに居てたら色々大変だろうから、買ってよかった)

「ペンギン……お前のは」

「違う写真集だ……シャチ、それ後で見せ合おう」

「分かってるっつーの」

おいそこの二人、本名で呼び合ってますよ。
致命的なミスが浮き彫りだ。

「何なんだ……!……まさか……」

ローには一度悩める少年に渡そうとした物を見られてしまっている。
だから、彼等に渡したお土産が何か行き着いたのだろう。
二人の緩んだ鼻の下を見れば分かる。
ローは心底冷めた目で溜息を付いた。

「旦那様も欲しかったですか?」

「まかり間違っても買うな。俺はいらねェ」

「旦那様は節操なしでしたわね、そう言えば」

「俺は一度も言った事はない……その話しはもういい。数時間後に出掛ける。帰るのは数週間後だ」

凄く急なスケジュールだ。
別に良いけど。

「そうですか、いってらっしゃいませ」

スッと頭を下げて階段を上がった。
ローがこちらを見ているのを感じながら。





数週間後と言いながら二週間もしない内に出戻ってきた。
一体何の為のアナウンスだったのか。
それに、一番驚いたのは刀の他に手に持ってきた物を渡された。
お土産とは言わなかったが「珍しい物らしい」と述べて無表情で受け取らせる。
やはり、意味が不明だ。

(………………!!ままま、まさかっ!好感度が上がってるの!?)

ふと立ち止まって考えてみれば、そうとしか思えない。
どうでも良い相手に物なんて普通買わないし、話しかけてきたのだって何よりの証拠だ。
大変な事になったと冷や汗をかく。
このままでは離婚計画が無くなるどころではない。
リーシャの人生に邪魔が入る。
完璧にミスを犯したのであろう己に叱責した。

(何やってんだろ!こうなる事は薄々可能性もあったのにい!)

好かれるなんて望んでいない。
自由になりたいだけなのに。

「…………いりませんわ」

「そうか」

あっさりと納得するローに歯を噛む。
不機嫌になるかと思ったのに。

「今日は気分が悪いので話しかけないでもらえますか」

そう言うとローは特に表情を変える事なく去っていく。
うう、これじゃあ罪悪感が半端ない。
でも、これも自由への投資だと思えば我慢するしかないのだ。
顔を歪めて首を振ると自室に籠もった。
せめてローが海へ出るまで顔を合わせなければいい。
此処は彼のテリトリーの船ではないし、強要される要素はないと思った結果だ。

(もうっ。とっとと離婚したい!何でこんな世界に生まれてきちゃったんだろ)

トリップしてきたなら帰れる宛てもあったのに。
溜め息を付いてはカリカリと羽ペンを動かす。
こんな事では上手く頭も働かない。
家に居続けるのも飽きてきたし、ローに合わないまま過ごすのも彼がこの場所に滞在している限り避け続けるのさえ難しいと思う。

(バイトしようかな……もう煩わしい使用人達も居ない事だし)

リーシャがどこで何をしていたって文句を言わないだろう。
憂鬱になっていると扉越しにノックの音が聞こえて返事を返す。
入ってきたのはワゴンを押したペンギンだった。
彼はハーブティーは如何(いかが)かと聞いてくるので頭を切り替えようと頷く。
少しして入れ終わったカップを手渡され口に運ぶ。
何も言わずに出て行くペンギンに首を傾げて見送ると再びカップを傾ける。
ただ入れに来ただけなのかと拍子抜けした。
凝った肩をグルリと回すと視界にある筈のない物が写る。
二度見したらそれはローの買ってきたというお土産だった。
驚いて暫く放置してからソッと立ち上がり袋を開けて見る。
中身はチョコレートのタルトだった。
賞味期限は今日までなので慌てて袋から出して食べた。
ハーブティーはこの為に入れたのだと知ったのは食べ終わった後だ。
なかなかキザな事をしてくれるじゃないかペンギン。



prev | next

[ back ]