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「#幼馴染」のBL小説を読む
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さて、今夜の晩餐はどんな料理が出るのだろうか。
皆さんこんばんわ。
特に仲良くもない父子関係を持つ皆のリーシャです。
ロー(おまけ)も隣に居ます。

「娘は君に迷惑を掛けていないかね?」

「いいえ」

ローが敬語を使っている。
明日は血の雨が降るのかもしれない、傘を忘れないでおこう。
ローが敬語とかレアなんじゃなかろうか。
そして迷惑を掛けるほど一緒に居ないよね?旦那様。
いいえ、で嘘が簡単に付ける簡単なお仕事で良かったね。
後でご褒美に飴でも上げようか?
黒い笑顔で同じ釜の飯を食べているリーシャは黙々と手を動かしている。
特に入るような会話でもないし、答えたらローにも支障が出るだろう。
父親の欲に塗れた目が心底嫌いだ。
海軍で貴族の癖に。
金だけで地位を買って成り上がった男。
娘を王下七武海と政略結婚させて更に地位を確立させた。
反吐が出そうだ。

「そうかい。不肖の娘だが自慢の子だよ」

「…………お父様、もう私の事は宜しいのではなくて?」

「はは、そうだな」

笑顔さえも吐き気を催す。

(不肖なのはてめーだよクソ野郎)

不肖不肖って自分も時々使うけれど、それはあくまで自分だけ使う時だ。
相手に使うとほぼ侮辱である。
ローに言うということは「駄目な娘だけど許してね」のニュアンスだ。
我慢してるのはこっちだっつーの。
悪態をつきながら黒い笑顔で一緒に笑う。
この場は物凄く混沌としていた。
黒い儀式をして藁人に釘を刺して呪いの言葉を言うのと、父親に相槌を打つのが一緒の様なものだ。
ローはそれを見る中立的立場だろうか。
貴族の黒い思惑なんてこれから起こすパンクハザードから始まる事態に比べると全く小さな事だろう。
この男と一文字でも話すとガリガリと自身のHPが削れる。
ローだって精神的な部分が減っているかもしれない。
それを分かっていて付いて来たのだから物好きと言うか何と言うか。

「今夜の部屋は用意しているから是非寛いでくれたまえ。勿論二人で寝れるので安心してくれたまえ」

安心してくれたまえじゃねえよこのクソジジイ!
フォークとナイフを落とさなかったリーシャは偉い。
誰も褒めてくれないので自分で褒めます。

(嘘でしょ?今まで一緒に寝たこともないのにっ)

内心歯軋りしているとクソジジイが(本音がついでちゃう、テヘペロ)愉快そうな顔で酒は飲めるかいトラファルガーさんと言う。
一応リーシャもトラファルガーなんだけれど。

「ええ、飲めます」

明らかに作ったへりくだりの台詞に父親はまんまと上機嫌になる。
その会話に混ざる気も出ない。
食事を終えると二人に「お先に失礼致します」と断って宛てがわれた部屋にいそいそと戻る。
ローを父親と居させても特に弊害はないので安心して眠れた。



朝起きるとかつて今まで体験した事のない状態に晒されていた。
そう、夢小説では鉄板シナリオとなっている『朝起きたら彼が私を抱きしめて眠っていた。だから重いし身体に腕が巻き付いて起き上がれない。キャッ!』という乙女がムネキュンするだろうシチュエーションだ。

(というか本当に重いこの人……!)

リーシャにはまだ父親との面倒臭いお話しが待っているというのに。
グッと身体を遠心力で動かしてもビクともしない。
身長が百九十以上あるから包容力が半端ないのだ。
押し潰されるという恐怖をこの男は塵にも考えていないのだろう。
こんな状態にムネアツとなるのは何も知らずにいつの間にか既婚女性だったという体験をしていない人だろう。
まあそんな女性が世の中に居るのかは定かではないが。
思考の海に浸っていると相手が身じろぐのを感じた。
こういう時のローのパターンは幾つかあるのを実は知っている。
一つ、実は起きている。
二つ、本当に寝ている。
どっちかのタイプだ。
幾つかあるとか言っときながら、二つしか上げられないのは……許してねっ。
リーシャが疑っているのは、実は起きているという説だ。
この世界のローは見ている限り原作に近い。
原作のローが結婚しているという事実は矛盾している。
となれば、考えられるのはパラレルワールドという理論だ。
もし、その理論があったならば性格も多少変わってくる。
でも、その違いをリーシャは絶対に知る事は不可能。
原作を知っていても、彼の全てを知っている訳でもない。
だからこの世界は別れた道だとしか知る事は出来ないのだ。

「もう起きて下さい。意識は既に覚めておられるのでしょう?」

カマをかけるなんて初めての行為だが、それは功を成した。

「気付いてたのか、驚いたな」

「貴方様は海賊。私が身体を僅かにでも動かすだけでその浅い眠りを浮上させる事は簡単なのでしょうね」

「流石は海賊の妻だな」

「鬱陶し(おっと!)、それよりも解放して下さいませ」

「………………何か言い掛けたか」

「寝ぼけただけですわおほほほほ」







朝の支度を長い時間をかけていれば、あっという間にお昼前。
父親に指示されていた時間に行くと書斎の椅子に座って手を組んでいた。
仕事はどうした仕事は。

「お父様、ご用とは何でしょう」

「言わなくても分かっているだろう」

「言ってもらわなくては分かりませんわ」

「使用人を解雇した件だ」

「あれは使用人が無能だったからの単純な事です」

「私が選んだんだ。無能なわけがあるまい」

「お父様の前では有能なフリをしていただけなのでは?それに私の言ったことをちっともしなかったわ」

「また見繕うから使用人を取れ」

「嫌ですわ」

「もうお前は役人の妻なのだ、我が儘は……」

「でしたらトラファルガーの姓はいらないです」

「!」

我が儘って便利だな。

「こんな窮屈なお願い。私耐えられませんわ」

「はあ……分かった。そのままでいい」

「流石はお父様。貴族の娘として誇らしいですわ。うふふ」

してやったりだ。

「トラファルガー、あの男について何か言うことはあるか」

お、次の本題に入った。

「いいえ、相変わらず全く家に帰りませんので」

その言葉で父は苦い顔をして部屋を出るように言った。
本当は言う事がたくさんあるのだが、言うかバーカ!!



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