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「嘘……トラファルガーさん……?」

「俺以外に誰がいるんだ?」

トラファルガーさんはあのニヤリとした笑みで笑う。

「なんで……私はもう来ないでって……!」

きてほしくなかった。

会いたくなかった。

顔を見てしまえば、声を聞いてしまえば、泣いてしまいそうになる。

「俺は海賊だ」

「……知ってますよ」

なのにトラファルガーさんは

「海賊は欲しいもんは絶対に手に入れるんだよ」

私の涙腺を簡単に壊してしまう。

「っ…うぅっ……!」

頬に雫が流れた私は顔を手で覆う。

でも、するりと彼の手が私の手を顔からゆっくりと退かす。

「泣いた顔もそそるな…」

「えっ!」

「くくっ…冗談だ」

トラファルガーさんは私の反応に喉を震わせる。

そしてすっと涙を指で掬う。

「俺はお前が好きだ」

「トラファルガーさん……」

まっすぐな目で私を見る。

「ダメですよ。貴方は海賊です、私はダメなんです…」

すっと私は目を伏せる。

「何を言ってるんだ…?」

「え、……きゃっ!?」

突然の浮遊感。

目を開けるとトラファルガーさんの顔が目の前にあって抱き上げられたことを知る。

「えっ!?何を……!」

私が驚きに目をしばたかせていると、トラファルガーさんは愉快そうに笑い。

「言ったはずだ、俺は海賊だってな」

そして彼は潜水艦へと走り出す。

「わっ!」

落ちないように慌てて彼に抱き着く。

彼は乗客の人達が見えるように高い場所へ飛び乗る。

するとトラファルガーさんはニヤリと笑い高々と声を張り上げた。









「海軍メイス・リーシャはハートの海賊団がもらった!!」




そしてトラファルガーさんは潜水艦に飛び乗る。

その時、トラファルガーさんは私に耳元でこう言った。







「明日の新聞の見出しは決まりだな」














そして私は貴方に誘拐されました













翌日、見事にトラファルガーさんが言った通り、新聞の見出しに私の名前が載ったのは言うまでもない。





















END



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