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俺は女の言葉に内心舌打ちをした。

確かにもう間に合わないかもしれない。

だがそんな理由で諦めるわけがなく、俺は港へ向かおうと女に背を向けた。

「貴方もつくづく呆れるよねぇ」

「……あ?」


俺は女の不快な言葉にピクリと反応し顔を向けた。


「だってあんな平凡で、おまけに海兵のリーシャちゃんを追いかけるなんてねぇ……」

女は先程の笑みを浮かべながらリーシャの事を馬鹿にした口調で喋り始めた。

そこで俺はこの女をどこで見たのか思い出す。

こいつは確かリーシャと話していたあの時の女だった。

「あんな子より私を選んでみない?」

俺が考え込んでいると女は胸糞悪い言葉を言い出した。

「はっ、お前をか……?」

俺が嘲笑うように言うと女は顔を少し歪める。

「なに?私の方が綺麗じゃない!」

女が不機嫌そうに言うと俺はニヤリと笑った。

「ククッ…まぁ、確かにお前はそこら辺の女よりは美人かもなァ」



俺がそう言うと女は嬉しく思ったのかもちろんよ、とさらに言葉を続ける。



「それにもしリーシャちゃんを追いかけても海兵がいるから無駄だしね」

「ほぉ?」

「だから私にしなよ?」



俺はおもしれェと言いながら女に近づく。

すると女は勝ち誇った顔をし、俺を見上げた。

「何を勘違いしてる。俺は一言もお前に乗り換えるなんて言ってねェよ」

俺が女の目の前に来てそう言うと女は驚きに顔を歪める。

「いいの?あんたなんか私が一言海兵達に言えば……」

俺は女が言い終わる前に後ろへ倒す。

「なっ……!」

女は一瞬の事で反応できなかったのか盛大に尻餅をついた。

「お前は馬鹿だな。海兵が例え何百人来ようがどうだっていいんだよ」

「っ……!」

女は悔しそうに立ち上がろうとすると馬のひづめがそれを邪魔する。

「いたっ!なんなのこの馬……!」

女はパニックを起こし叫ぶとぞろぞろと他の放牧されていた家畜が取り囲むように女の周りに集まってきた。

「な、なんなの一体!?」



流石の俺もその異様な光景に驚きを隠せなかった。



「どうなってるんだ……」



俺が呟くと女は自分を助けるように言ってきた。



「フフ……海兵が海賊に助けを求めるのか?あらかたそいつらに何か恨みでも買ってんじゃねェのか?」



俺が女を見下ろしながらそう言うと女は心当たりがあるらしく喚きだした。


「そんなありえないわ!低脳な家畜に……いたぁっ!」



女は馬鹿なのか動物達に卑劣な言葉を言いかけて今度はニワトリに突かれた。



「ククッ……精々その家畜とやらに遊んでもらうんだな」

「あっ、ま、待って……!」



俺は女の助けを求める声を背に歩き出した。




(ようやく恨みを晴らせた者達は翌日生き生きとしていたそうだ)



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