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「………」
(どうしたものか……)
ペンギンは先程から心有らずな船長にどう対処すればいいのか悩んでいた。
何故こんな事を考えているかというと、それは小1時間前に戻る。
「あ、船長。今帰ったんですか?」
「……あァ」
船長はその時にはすでにどこか遠い目をしていた。
「どうかしたんですか?」
俺がそう聞くと船長はいや、と何も話さなかった。
いや、明らかに何かあったと顔に書いてあるからな。
俺は内心そう思いながらもそれ以上は追求できなく、現に今俺はどうやって船長から話を聞き出そうかと考えていた。
「……直接聞くしかないか」
結局俺は原因を探る為に船長室へ向かった。
「船長、何があったのか話てもらえますか……?」
俺は船長室に着くとノックをして返事があると中へ入る。
俺が開口一番にそう言うと船長はしばらく考える素振りをすると、慎重に口を開いた。
「今日、リーシャの家に言って来た」
俺は船長の弱々しい声に少しからず驚いていたが、今は話を聞く事に集中した。
「それでどうして海軍の駐屯場を襲撃したのか、って聞かれたんだよ」
「………」
「だが俺は答えられなかった。俺が黙り込んでるとリーシャは海賊は人を殺すんだと当たり前の事を言ってきた。」
船長の言葉は俺達にとっては当たり前過ぎてあまりピンとこなかったが、船長にとってはその言葉は重かったのかもしれないと思った。
「……もう来ないでください、とさ」
最後の言葉に船長は諦めに似た、自嘲を含んだ笑みを見せた。
(そういうことか……)
俺は船長が沈んでいる原因は全部そのせいかと納得した。
こんな時、心底情けないと感じるが船長に掛ける言葉が全く見つからない。
海兵相手の恋なんて先が見えていたが、まさか彼女から船長を拒絶したのには驚いた。
彼女の性格からして相当の怖がりで、おまけに一般人とあまり変わらない戦闘力だからまず、船長を嫌っていて強く言ったとは考えにくかった。
その前に俺はそこまでしか彼女の事を知らないから事実がどうなのかなんて全くわからない。
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