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――ガチャ
「明日の用意をしないと……」
今日もいつものように雑用をこなし、帰宅した私は靴を脱ぎながら夕食を作る為にリビングへ向かう。
――コンコン
「え、こんな時間に誰だろ?」
私は扉の叩く音に玄関へと方向を変えた。
「誰ですか?」
私はそう言いながら扉を開けた。
――ガチャ
「よォ」
「え」
なんと前回は不法侵入をしてきたのに、今回は何故かちゃんと玄関の前にトラファルガーさんが立っていた。
「な、んで……」
(こんな時に……!)
トラファルガーさんへの気持ちを自覚したばかりの私にとっては間が悪いとしか言いようがない。
「たまたま近くを通ったんでな」
トラファルガーさんは驚いた私を見ながらニヤリと笑い、部屋へ入っていった。
(えぇ!?)
「え、あの、ちょっと待ってください……!」
私はトラファルガーさんの素早い行動に驚きながらも後を追った。
「うまいな」
「はぁ……」
結構あのあと、トラファルガーさんに家から出て行ってもらおうと頑張ったが、やはりそこは2億の賞金首なのか、のらりくらりと話しをかわされて最後にはトラファルガーさんと一緒に夕食を食べる事となってしまった。
(どうしてこうなるんだろ……)
自分の不甲斐なさにため息が漏れた。
「……新しい職場には慣れたか?」
「……え、は、はいっ!」
黙々と食べていたトラファルガーさんが突然そんな事を言ってきた事に驚きながら慌てて返事をした。
「そうか」
トラファルガーさんはそう言うとまた黙々と食べ始めた。
(いきなりどうしたんだろ?)
トラファルガーさんの言葉に私は彼の顔をじっと見た。
するとトラファルガーさんは視線に気がついたのか少しばつが悪そうに呟いく。
「前の島では辛そうに仕事してただろ……」
「……!」
(そっか……)
私はあの島でトラファルガーさんが私の事を見て心配してくれたんだと感じ、さっきの質問の意味を理解した。
「……あ」
それと同時に私は重大な事を思い出した。
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