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「うん……だから今のうちにメアリーといっぱい喋る事にしたんだよ……!」
私は沈みそうな気持ちを隠して明るく言った。
「……そうね、沢山話ましょ」
メアリーは私の言葉に笑って頷いた。
「そしたらね、その馬勝手に寝ちゃったのよ!」
「あはは!それは酷いね」
私達はあれからずっと喋り続けている。
牧場には全く人がいなくて私は気にせずにメアリーとの会話を楽しんでいた。
「あ、そういえば……」
私が笑っているとメアリーは思い出したように首を傾げた。
「どうしたの?」
私は不思議に思ってメアリーの言葉を待つ。
「この間、貴女の家に男の人が入っていったのを見たのだけれど……」
(……!――それって……)
私はメアリーの男の人が誰だかわかり、再び胸がギュッと苦しくなった。
「あの人は貴方の知り合いかしら?」
「あ、あの人は……」
(えっと……)
私はトラファルガーさんの事をなんと言えばいいのかわからなくて黙り込んでしまった。
「リーシャ?」
「あ、えと……あの人は、ただの知り合いだよ!」
私はそこではっと我に帰り、慌てて答えた。
(そう、ただの知り合い)
私は、トラファルガーさんとは敵対同士。
海賊と海軍。
決して馴れ合う事はない、馴れ合えない者。
私達の関係なんて火を見るより明らかなのに。
(どうして)
でも私はこの感情の正体を知っているから。
「………」
メアリーは静かに何も言わず見ていた。
(貴方と私の関係に名前を付けたくない、なんて)
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