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「そんなっ、貰えません……!」
私はトラファルガーさんの全ての行動の意味にやっと気づき、慌てて断った。
「まぁ当たり前か……」
私の言葉を聞いたトラファルガーさんはそう言うと突然私の手を掴みさっきの店へと向かい始めた。
「え!――あのっ……!」
私は引かれるがままその店に入るとトラファルガーさんが店員に何か言いながらお金を払っていた。
「ではこちらに」
「え……ちょっ!」
私がぼんやり見詰めているとお金を受け取った店員と何人かのスタッフが私を着替え室に押し込んだ。
(なんなの?!)
私は何が起こっているのかわからないまま服を着替えさせられメイクやら色んな事をされた。
「………」
「お似合いですよお客様!」
「確かにな」
今の私に店員とトラファルガーさんの声なんて耳に入って来なかった。
あの後やることが全て終わった店員達が私をトラファルガーさんの前まで連れてきたからだ。
私は今の自分の姿にまるで別人なんじゃないかと思った。
メイクなんて普段しないから余計にそう感じた。
「………」
「フフ……そんなに気に入ったか?」
「……え、あ……あれっ?」
私がトラファルガーさんに呼びかけられて我に帰るといつの間に店を出ていた。
「心此処に在らずだったな」
「す、すいません……!」
私は自分がトリップしていた事に恥ずかしくなった。
「構わねェよ。ほうけた顔が見られたからな」
「〜っ!」
私はその言葉に赤面した。
「ククッ……」
そんな私にトラファルガーさんは笑いながら繋いであった手を違う形に繋ぎ直した。
「……!――ト、トラファルガーさん……!?」
「なんだ」
「これ……」
私は目で説明を求めた。
「デートなんだから恋人繋ぎは当然だろ?」
(ととと、当然って!)
私は平然と言うトラファルガーさんに体温が上がっていくのを感じた。
(誰かこの静まる事のない心臓の止め方を教えてください)
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