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私がココナちゃんを探す為にあちこち顔を動かしていると突然トラファルガーさんが私の頬をスルリと撫でてきた。
「……へ」
私は反応に遅れてただ茫然とトラファルガーさんを見る。
「フフ……そんな格好をしているということは当然そういう意味のサービスをしてくれるんだよなァ……?」
「……!、え、ああ、あのっ……」
私はトラファルガーさんが醸し出す妖しい雰囲気に、これはヤバいと感じた。
「……コ」
「コ……?」
トラファルガーさんが妖しく笑いながら聞いてくる中、私は思いっ切り力の限り叫んだ。
「コ〜コ〜ナ〜ちゃ〜んんん!」
私は叫びながらトラファルガーさんを突き飛ばし、ココナちゃんが顔をひょっこり覗かせるのを見るのと同時にココナちゃんの腕を引っ張りながらお店を一目散に飛び出した。
*****
「はぁっ、はぁっ……」
「な、に……が、どう、なってん、の……よっ!」
ココナちゃんを連れて店を飛び出した後、私達はしばらく走った。
私自身、全くといって体力がないためにあっという間に息が上がってしまった。
ココナちゃんも同じようで壁に背を預けながら息を整えている。
「い、いきなりごめんなさい……!」
私が慌てて謝るとココナちゃんはもういいよ、と言った。
「もう帰ろ、私疲れたし」
「うん……」
私達は駐屯場へゆっくりとした足どりで向かった。
***
「ククッ……」
少しからかっただけで慌てて店を飛び出していったリーシャに可笑しくなり俺は上機嫌でグラスの酒を煽った。
「貴方という人は……どうしてチャンスを潰すんですか……」
ペンギンが俺の隣へやってきて呆れたようにため息を付いた。
「なに言ってる。まだまだ時間はある」
俺がペンギンにニヤリと口角を上げながら言うと微かに驚いた顔をした。
「本当に惚れたんですね……」
「フフ……今更それを聞くのか?」
ペンギンの言葉に俺は信じていなかったのか、と内心薄く笑った。
「はい、なんせ船長は女を取っ替え引っ替えでしたから」
そうこいつは無表情で言った。
「……そうだったな」
そんなペンギンに俺は苦笑いするしかなかった。
人を好きになるとこんなにも変わるものか、と自分も、そしてクルー達誰もがそう思った事だろう。
「出会い方からしてまるで本の中みたいだったからな……」
俺がぽつりと呟くとペンギンは答えずに静かに聞いていた。
(君に出会い僕は自分の中にある知らなかった感情を知った)
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