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最近船長の機嫌がすこぶる悪い。
まァ……理由はわかってんだけどなァ……。
「お前はこんなところで何をしてるんだ」
「お、ペンギン。ちょうど良いところに来たな!」
俺が一人で物思いにふけているとペンギンがやってきた。
「お前が考えている事がわかるから遠慮する」
「なっ!んな事言うなって……!」
チクショー、ペンギンの奴、相変わらず毒舌だな……!
俺は嫌がるペンギンを無理矢理向かい側に座らせる。
「はぁ……少しだけだからな……」
「おう、十分だ!」
俺はペンギンに船長について話す。
「船長マジで機嫌悪くってやべェよなァ?」
「……まァな」
ペンギンも言葉を濁したが船長の最近の豹変ぶりに戸惑っているようだ。
「船長が恋、なんてなァ……」
「ククッ……だが、面白そうじゃないか?」
「ペンギン……、お前それ本気で言ってんのか?」
「あぁ」
ペンギンの言葉はなんというか…自信があるというような口ぶりだった。
「だけどよ、そのリーシャは……」
「行方知れず、だな……」
さすがの船長でも今回はお手上げだろう。
「まァ……もし見つけられて、船長の機嫌が直るなら俺はあの女を女神と呼ぶな」
俺はふざけたつもりでそんな事を言った。
「じゃあ賭けるか…?」
「……はァ?」
「このグランドラインで二人が再会するか、しないかに……」
ペンギンの言葉に俺はそんな事は絶対にありえないとその時は鼻で笑う。
「よし、乗ったぜ!」
俺が自信満々に再会はありえないと言うとペンギンは愉しそうに口端を上げて笑った。
「俺は再会する方に賭ける。ククッ……シャチ、世の中には奇跡とやらが存在するんだぞ?」
俺はその時のペンギンの言葉の意味を理解できなくて眉根を下げる。
だけど、春島でリーシャの姿を見た瞬間、俺は賭けの敗北と奇跡の瞬間を理解させられたんだ。
(ペンギン、俺の負けだぜ………)
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