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「君達には潜入捜査をやってもらう」
「はい……」
「はぁ〜い」
私とココナちゃんはラム大佐に任務を任された。
ラム大佐は他の人と違い、ココナちゃんに夢中ではなくしっかりとした人で私は内心とても安心した。
「ココナ、メイスをちゃんと指導しろ」
「わかってますよぉ〜」
ココナちゃんが面倒くさそうに返事をした後、大佐が今回の任務の詳細を説明する。
「二人にやってもらう任務は酒場に潜入し、そこにいる海賊の情報を聞き出してくる、非常に危険な任務だ。」
大佐は真面目な表情で言った。
「その海賊の詳細は先にココナに伝えている。だから早速今から任務に向かってもらう」
「はっ、はい……!」
潜入捜査は初めてのため、私は内心冷や汗をかいていた。
***
「こここ、こんな格好、恥ずかしいっ……!」
「そんな事ないよぉ〜!青いドレスがよく似合ってるよ?」
「ででで、でもっ……こんなに露出した服なんてっ……!」
「え〜?胸の谷間が見えて私はいいと思うよ?」
ただ今私達は酒場にある控室でドレスを着替えさせてもらっていた。
店の主人にはあらかじめ大佐が話をつけていてくれたため、迅速に事が進めた。
だが私にとってはとても恥ずかしいドレスを着る、厄介な任務だった。
「胸が見えてるっ……!」
ココナちゃんは嬉しそうに鏡を見ている中、私はというと、一人タオルを巻いていた。
店のスタッフさんが私からタオルを退けようとあれこれと言ってくれてはいるが、恥ずかしさで爆発しそうだ。
「任務、これは任務……」
自分になんとか暗示をかけながら私はゆっくりと立ち上った。
「………」
「おい、船長をどうにかしてこいよ!」
「俺がかァ?!お前が行ってこいよっ!」
「俺はまだ死にたくねェんだよ…!」
「俺だって!」
ロー達ハートの海賊団はリーシャがいた島を出て、今は春島のプラトニック・ガーデンという島にたどり着いていた。
ローはリーシャが居ない事を知った後、居場所を問いただす為に海軍の駐屯場を襲った事でクルー達は急いで島から離れる事となったのだった。
だが、その島にいた軍曹が全く口を開かなかった為にリーシャの行方はわからずじまい。
そのせいで今を含め、航海中はローの機嫌は最高に悪かった。
いつものように酒場で飲んでいる間であってもローは殺気を含んでいる空気を漂わせていた。
「誰でもいいから助けてもらいたい……」
シャチがそう呟いた時だった。
「お待たせしましたぁ〜!」
猫撫で声を出しながら肌を露出した女がやってきた。
もちろんそれは夜の酒場であれば、そんなサービスは当たり前。
だが今のローにはそんな事でさえ煩わしいものはなかった。
「チッ、俺はいいから他のやつを相手にしろ」
ローがそう言うとココナは残念そうな顔をした後、思い出したように後ろを向いた。
「……あ、忘れてた!実はもう一人いるんですよ〜?」
ココナはそう言うとロー達からは見えない死角に声をかける。
「えっと……て、何してんの?恥ずかしがってないで早くおいでよ!」
「え、ちょ、待って……!」
ココナは出ていく事を躊躇しているリーシャの手を引っ張る。
そしてリーシャの姿がハートの海賊団の目に映った瞬間―――。
「「「えっ……?」」」
「……え!?」
クルー達が揃って声を出すのと同時にリーシャは目を見開いた。
(これが運命だというのであれば俺達は最強の運を持っているに違いない)
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