29
「へぇ〜?リーシャちゃんの誕生日ってもうすぐなんだぁ?」
「う、うん……」
この島に来てからしている事といえば雑用ばかりだった。
戦うのは嫌いだから私にはその方が性に合う。
でもすぐに終わってしまうから余った時間はココナちゃんとお茶をする事が日常的になっていた。
「あれ?そういえばココナちゃんの仕事は…?」
私はココナちゃんの雑務をしている姿を見ていなかったので不思議になった。
「え?、あぁ!それなら他の海兵がやってくれてるの!」
「え……」
そんな事をしていいのだろうか……。
私がそう思っていると男性の海兵がココナちゃんに声を掛けた。
「ココナちゃん!仕事やっといたよ!」
「え〜!もうできたんだぁ?ありがと〜!私嬉しぃ〜!」
ココナちゃんは手を両方顎に持っていきながら笑顔で海兵に言う。
「………」
私はおかしいと感じながらもココナちゃんに逆らってはいけないということだけは野生のカンというものでわかった。
「ココナちゃ〜ん、頼まれていたケーキ買ってきたよ〜!」
今度は違う海兵が箱を手に持ってやってきた。
「うわぁ〜!わざわざありがとぉ〜!」
ココナちゃんがニッコリと笑うと海兵は照れながら私の方へ向く。
「君は……確かメイスさん、だよね……?」
「は、はいっ……」
私は緊張しながら海兵と向き合った。
するとその海兵は笑いながら私の手をとり握手をする。
「よろしくね!何かわからない事があったら、なんでも聞いてね」
「あ、ありがとうございます……」
私は悪い人ではなさそうだと思いながら返事をした。
「あぁ、それはもう当たり前過ぎて笑えてくるわよ?」
羊のメイリーにココナちゃんの事を話すと、昔から知っていたようで呆れたように話していた。
「そうなんだ……」
「えぇ……それはもう我が儘な女よ……!」
メイリーは怒ったように思い出していた。
「何かあったの……?」
「何か、なんてもんじゃないわよ……!」
メイリーはそう言いながら事の詳細を説明する。
「忘れもしないわ……」
あれはココナがこの島へきて少し経った時の事だ。
その時から既にココナにメロメロだった海兵達にココナがある頼み事をした。
「モコモコした毛皮が欲しい」
たったその一言で海兵達は羊達を追いかけ回して、その毛皮を刈った。
おかしい話だ。この島は春島だというのに。
だが、
「やっぱりたくさんの牛乳がいい」
またその一言で海兵達が牛達からたくさんのミルクを搾った。
だけども、
「やっぱり全部いらな〜い」
と丸投げをした。
さすがの海兵達も怒るかと思いきや、
「だって……皆がいるから、ね……?」
その言葉を最後に男の海兵達を取り込んでしまった。
それからというもの海兵達はココナに忠犬のように従っているという有様だそうだ。
「す、凄いね……」
私は話を聞き終わると、余りのスケールの大きさに他の言葉が見つからなかった。
「そうなのよ、今でもその時の恨みを果たしてないのよね……」
メイリーはため息混じりに呟いた。
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