24
仕事の移動の話から三日過ぎた。
私はいつものように顔を洗いながらふと、トラファルガーさんの事を思い出す。
「そういえば最近トラファルガーさんを見てないな……」
仮に戦ったとしても私ほどの海兵なんか簡単になんとでもできるだろう。
私はそんな事を考えながら焼きたてのパンにかじりついた。
「朝はパンなんだな」
「……え……?」
聞こえるはずがない声に驚きながら振り向くと、何故かソファの真ん中に堂々と座っているトラファルガーさんがいた。
「あァ、俺の事は気にせずに食べろ」
そんなトラファルガーさんの言葉はなに一つ聞こえなかった。
「ななななっ……!」
なんでこんな所にトラファルガーさんが……、という前に……
「ど、どうやって家にっ……?!」
「…カギが空いてたんだよ」
「え?」
空いてた?
いや、そんなはずはない。
なぜなら昨日はちゃんとドアと窓の戸締まりは確認した。
ランちゃんに昔から家の戸締まりはしっかりするようにと言われているからだ。
夜中に変な人が入ってこないようにだと言われた。
でも――。
(朝からカギを掛けても入ってくる人がいたよ、ランちゃん……)
私は心の中でランちゃんに静かに報告をした。
いつの間にか私の家に不法侵入していたトラファルガーさん。
その後もずっとパンを食べている姿を見られてかなり恥ずかしかった。
私はなんとかその視線に逃れようと苦し紛れに、
「ト、トラファルガーさんはもう朝食は食べま、ましたか……?!」
「いや、まだだ」
「じゃあっ、何か食べますか?」
「……もらう」
…………。
私は自分の言ってしまった事の重大さに後々後悔した。
「じ、じゃあ作ってきますね!」
私は急いでキッチンへ向
かうと頭を抱える。
「うぅっ……私のバカッ……!」
こうなってしまえばもう作るしか他に道はない。
私は泣く泣く調理をするために立ち上がった。
***
しばらくして私は出来上がった料理をテーブルへ運んだ。
驚いたことにそのテーブルの椅子にトラファルガーさんが座っていた。
――コトッ
「ど、どうぞ……」
私はそのまま立っている事にした。
「わざわざすまねェな」
「いえ……」
いくら海賊でも不法侵入者でも自分の作った料理を口にされるのはとても緊張するものだ。
「………」
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